第1714話 ページ1
賢志郎side
「あなたは私のことをどれだけ認識してるの？」
女の子「テレビとか広告とかで見たことある。名前は、えっと…………」
思い出そうとしているが、どうやら思い出せないようや
「じゃあこっちの男性は？」
そう言って俺を指すA
かぶりを振る女の子
賢志郎「テレビ、あんまり見ぃひんの？」
そう言うと、悔しそうな、苦しそうな顔をして黙ってしまった
もしかして地雷みたいなの踏んでもた？
「……テレビ見ないのは、今回のことと関係ある？お金とか」
気を遣いすぎることも、ましてや憐れむこともないまっすぐな声
Aの真摯な態度が響いたのか、ゆっくりと頷いた
女の子「……春に、養護施設を卒業して。学歴もないから、工場で派遣で働いてた。………サービス残業が当たり前で、時給に直したら1000円もいかないと思う。家具とか、家電とか全然買えない。買えても、それを使ってる時間なんてない」
春に施設を出たってことは、今は19歳とかなんかな
歳の割には肌艶も良くなく、若々しさもない
話を聞いている限り、かなり厳しい生活をしてきたんやろう
女の子「でもそこも先月契約が切れて。次の、見つからなくて。………もちろん貯金なんてないから、でも家賃とかかかるし……。…………だから………」
そう言って言葉を詰まらせる
嘘を言っているようには、見えへん
「……こんなことをしたのは、これが初めて？」
小さく首を振る
きっと何回もやってきたんやろう。そもそもぶつかった瞬間に盗めるのは、1回目でできることやない
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作者名：水音 | 作成日時：2024年1月19日 21時
