第1671話 ページ9
Aside
下腹部にねっとりした潤滑油を塗られ、その上を機械が滑る
健康診断で何度か経験しているが、やはりこの感覚は慣れない
医者「あ、見えますね」
「え？！」
医者「わかります？右上のここ………と、ここ」
「え、２つ？！」
確かに彼が指差すところには２つの………何かがある
医者「頭ですね。それで、そっちとこっち側が、それぞれの足の方です」
「はぁー………全然人の形をしてないもんなんですね」
医者「ピルをやめた後に出血はありました？」
「ええ。3日後………とか」
医者「だったら、今は8週目です。まだ人の形とは程遠いですね」
喜びより驚きの方が優っている
分かってはいたけど、私が妊娠するなんて
そして、双子なんて
「双子って遺伝するんですか？」
医者「します。………ああ、川西さんも双子なんですよね？」
「ええ。二卵性の。この子たちはどっちですか？」
医者「断言できません………が、一卵性よりは二卵性の可能性が高いです」
エコー映像の横に二つの心電図
そうか、私のお腹の中には２つの命があるんだ
医者「産科の領域は僕ではカバーできないので、次回からは産科で検診を受けてください。うちの病院の産科でいいですか？」
「あ、はい」
医者「では、次の検診の予約を入れておきましょうか。2週間後が望ましいのでーー」
冷静に予約を取っている自分と、感動と興奮で脳みそが沸騰しそうなほど熱い自分の2人がいる
私は妊娠している。私は、母親になる
事実としては受け止められているが、具体的な想像が何もできない
いやいや、何を1人で考えようとしてるんだ
私と、賢志郎さんの子でしょう
まずは、賢志郎さんに何て伝えようか
………恋ちゃんはその後でいいや
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作者名：水音 | 作成日時：2023年10月14日 19時
