第1713話 ページ50
賢志郎side
「よく見てるね。………で、ぶつかった瞬間に私が貴女のお財布を盗ったことに後で気づいた、と。………私を選んだ理由は、私が妊婦だから？」
女の子「………別にそれ以外、理由はないけど」
「そう……」
そう言って徐にマスクを取るA
そうか。“碧海Aやから選んだん？”って気づかせるんか
「私だから、選んだの？」
少し伸びた前髪をかき揚げ、顔を見えるようにして問いかけるA
しばらく困惑した顔をしていたが、何かに気づいたように声を上げた
おそらくこの子はAが誰だかあまり知らんのやろう
若い子でそんな子がおるんか、日本に
女の子「見たことある……テレビの人？」
「うん、そう。……そういう理由で狙ったわけではないのね？」
女の子「違う。あなたのことは、よく知らないし」
Aのことすらよく知らない。それなら、俺のことはもっと知らんやろう
「あなたのお財布は返すよ。もちろん誰にも言うつもりはない。……私の話を聞いてくれるならね」
女の子の、カップに伸ばされた手がピタッと止まる
そして再び、何かを疑う顔になる
Aは何を言うつもりなんや？
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作者名：水音 | 作成日時：2023年10月14日 19時
