第1712話 ページ49
賢志郎side
Aのよく行く、芸能人御用達のカフェ
1組しかいない先客から1番遠いテーブルにその女の子と向かい合って座る
俯いたまま、顔を上げようとしない
「……なんで私のお財布を盗ろうとしたの？」
賢志郎「盗る……？」
「すれ違いざまにぶつかって、盗ったよね。それに気づいたから、私も貴女のを盗って、待っていたの」
賢志郎「そんなことしたん？！」
いや、流石に盗るのはあかんやろ
でもAには意図があったんかな。現に、この女の子は戻ってきたわけやし
乾燥して艶のない唇を噛む女の子
テーブルの上に置かれた拳が小さく震えている
女の子「理由なんて、そんなの………」
「お金？………それだけ？」
Aが少し疑うような目を向ける
マスクは外していない。……ああ、“A”やから狙われた、と考えてるんや
女の子「それ以外、あると思うの？」
「じゃあ、どうして私を狙ったの？」
女の子「だってあなた、妊婦だから」
「えっ」
思わずカップを落としそうになる
この子、気づいとるん？
コートを脱いだ今、Aの体型を視認するのは容易い
でも、コートを着ている状態で気付いてたってことなん？
「どうして気づいたの？」
女の子「………歩き方。妊婦特有の、股関節の開いた…………」
喋りすぎたと思ったのか、ハッとした表情をしてまた押し黙る
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作者名：水音 | 作成日時：2023年10月14日 19時
