第1709話 ページ47
賢志郎side
「うーん、あっつい………」
賢志郎「やっぱりそれだけ着込むと、なぁ……」
11月の下旬。16週になったお腹は、腹筋ではもう抑えられなくなっている
普通に服を着ていたら、わかってしまうやろう
しかしギリギリ、冬服＋体のラインを拾わない厚いコートなら、お腹が大きくは見えない
そうなると当然のことだが、この季節にはまだこの服装は暑い
賢志郎「もともと代謝ええから、歩くとすぐに暑くなってまうもんなぁ」
「そうなんだよ。かと言って、コートは脱げないし……もし私ってバレたら、そのまま妊娠してることもバレるしね」
Aも俺も仕事関係者に妊娠を伝え、表に出る仕事は今のところ殆ど無い
ラジオで放送終わりに写真をアップするが、そのときはゆとりのある服を着たり、屈んだり、お腹が机に隠れるように……と色々策を講じているようや
写真をアップしなかったら、それこそ疑問に思われるんやろう
ラジオと、エッセイと、ほんの少し他の仕事
おかげでこうして、Aと休みが合う日も増えた
賢志郎「Aがソールの薄い歩きやすい靴を履くようになったから、俺が革靴を履くと身長ぴったりになるな」
「ね。まあ、賢志郎さんが靴を脱いだら戻るんだけどね笑」
賢志郎「うるさいわ」
新宿の喧騒の中なので、いくら大声で笑っても周りの人は俺たちに気づくことはないやろう
冬だから、マフラーもマスクもしていても誰も不思議に思わない
今だけは、Aも、碧海AではなくてただのAとしてリラックスしている
「ねぇ、このあと見に行くソファなんだけどさ…………わっ」
賢志郎「大丈夫？！」
前方からAに誰かがぶつかってきた
振り返っても、それらしい人はもう見えない
「大丈夫。そんなに衝撃なかったし」
賢志郎「ほんまに？少し休んだ方がええんちゃう？」
「大丈夫だって。……あー………でも、ちょっと待ってみようか」
賢志郎「え？」
待つ？
何を？
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作者名：水音 | 作成日時：2023年10月14日 19時
