第1704話 ページ42
郁弥side
「い……く…」
寝室から掠れた僕を呼ぶ声が聞こえる
きっと、食事が終わったのかな
一応ノックして寝室に入ると、空になっていないスープカップとお皿が見えた
郁弥「パン、半分しか食べられなかった？………ああ、謝ろうとしなくていいよ」
ちぎられて、半分ほど残った白パン
スプーンが入ったままの、量が殆ど変化していないスープ
「スープ………インスタ………トの、匂い………ごめん、先、言えば………」
郁弥「謝ることじゃないってば」
そういえば、インスタントやレトルトの独特の風味がダメだ、っていう意見もあったな
「食べ……ごほっ、3人分………の、栄養………………」
郁弥「ん……？」
3人？
今、3人って言った？
Aは咳でうまく喋ることができない
だとしても、“ふたり”と“さんにん”を聞き違えることはないだろう
郁弥「お腹の赤ちゃん、双子ってこと？」
3人、つまりそういうことになるはずだ
なのにAは首を横に振り、指で3を示す
そして、自分のお腹を指差す
お腹に、3人………？
郁弥「三つ子ってこと……？」
そう訊くと首を縦に振る
郁弥「三つ子………三つ子？！え、とてもそんなふうには……」
やや厚めのパジャマを着たAのお腹は、大きく見え……なくもないが妊娠しているかと聞かれると、そうは見えないような気もする
「筋肉……多いと、あまり、最初は………らしい」
僕の抱いた疑問がわかったのか、苦しそうに答える
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作者名：水音 | 作成日時：2023年10月14日 19時
