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第1692話 ページ30
賢志郎side
「もし、仮の話だけど。私たちを妊娠した時点で父と別れていれば、こんなふうにはならなかったのかなぁ……とか。たらればだけどね。母の方が率先して私に仕事をさせようとしていたかもしれないし、なんとも言えないけど。……産んで最低限育てたことには感謝……ほどではないけど、思うところはあるよ。だから、死んでくれて清々した！……とも思わない。悲しくもないけど」
賢志郎「……そっか」
「もし私が名だたる文豪であっても、この感情を表現することはできないと思う。……うん、無理だね」
「……うん、ありがとう。賢志郎さんといると不思議とさ、感情が流れ出るんだよね。溢れ出るほど大きくない感情も、いつの間にか」
俺の肩に頭を乗せ、そうポツリと呟く
賢志郎「Aにとって俺だけが唯一そんな存在で居れるんなら、そない嬉しいことあらへんよ」
「……自分で言ってて、クサいセリフだと思わなかった？」
賢志郎「………言われて気づいたわ」
頭を揺らしながら愉快そうに笑う
Aにはそうやって、ずっと笑っていてほしい
Aのこれからの人生も、生まれてくる子たちの将来も
絶対に幸せを欠かないようにする覚悟は、もうとっくにできている
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作者名：水音 | 作成日時：2023年10月14日 19時
