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第1690話 ページ28
賢志郎side
家に帰ってから、Aは一言も喋らへん
何をするでもなく、ぼんやりとソファで横になっている
普通なら、母親が亡くなった悲しみで落ち込んでいる……ように見えるんやろうけど
Aに限っては、そういういことはないやろう
坂田さんは“Aにとってストレスとなり得る”と言った
確かに、どんな種類であれ負の感情を抱いたらストレスになるだろう
ただ、あの時のAはそういうのやなかった
表情、声のトーン、醸し出る雰囲気。言うなれば虚無
きっと、何も感じなかったわけではない
様々な感情が押し寄せてきたからこそ、その場では処理しきれそうになかったから無意識のうちに何も感じないようにした……
そうだとしたら、今のAは？
溢れてとどめない感情を、いまだに押さえ込んでいるんやろうか
だとしたら、それこそストレスになるだろう
二人分のマグカップを持ち、Aの隣に座る
賢志郎「疲れた？」
「んー……そうだね、今日は色々あったしね………」
ゆっくりと起き上がり、マグカップを受け取るA
その目は心なしか、いつもより遠くを見ているように思われる
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作者名：水音 | 作成日時：2023年10月14日 19時
