７★ ページ7
間借りしてる店舗の二階まで香る、オーブンから立ち登るいい匂いにつられる様にして店の作業場に降りると、智さんが綿棒で生地を伸ばしてて。
「おはよ、松潤。」
俺に気づくとふにゃふにゃ笑って挨拶してくれる。
「はよっす。」
俺も挨拶を返すと、控室兼事務所に入りシャツの上にコックコートを羽織り赤の四角巾を首に巻いて、お揃いの赤いエプロンも腰に巻いた。
昨日の在庫をチェックしてあったノートを確認、予約のホールケーキも確認してキッチンに戻る。
「んふふふ。」
気色悪い笑いの智さんにどう返事をしたらいいか…。
「何すか？」
「いやね？やっぱりイケメンは何着てもカッコいいなぁって。」
「俺はそっちの趣味ないっす。」
「わかってるよ〜。昨日もあの可愛い女の子来てたもんね。」
「アレも彼女とかそういうんじゃないっす。」
「うん。知ってる。君の片思いでしょ？」
「…。」
「ありゃ…マジで図星だった(笑)」
『ごめんよ』って謝る智さんは、ふにゃふにゃ笑ってて、到底謝ってるようには見えない。
こんなんでもこの店のオーナーだ。
パティシエを目指した俺が通ってた製菓学校で出会った彼。
と言うか…
『君をスカウトするよ。そんだけイケメンでコックコート似合う男はそうそういないし、女の子の客寄せになる！』
って昼飯食ってたらいきなりスカウト(？)された。
彼の両親から受けついだこの店は元々パン屋で、今時パン屋だけじゃって、店をやりながら製菓学校に通って洋菓子を勉強しに来てたらしい。
それなのに俺をスカウトした途端、俺が了承もしてないのに製菓学校を辞めてパン職人に戻り…
『ケーキは松潤に任せたからね？学校卒業して数年はどっかで勉強して一人前のパティシエになって俺の店に来る事！いいね？』
と…。
この歳でなかなかメインパティシエにはなれないし、それなりの給料も提示してくれた。
一人前になればAも俺を見てくれるってどっかで期待して…
結局Aは俺なんかはなっから男としてみてないんだけど。
Aの夢があの幼い頃のままなんて…
どっかで信じてた俺がバカだったんだって話。
それでもパティシエになって一生、Aに美味いケーキを食わせてやる夢は捨て切れなかったんだ。
いつか…
そう…いつか…
Aが俺がココで待ってるのに気づいた時、あの夢が現実になる様に俺はパティシエでなきゃダメなんだ…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1412人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とも(プロフ) - やったネ潤くん(*^^*)途中櫻井くんが出てきちゃった時にはちょー焦ったｗｗｗ一途な潤くんの悲しむ所は見たくないって念じながら拝読しましたｗｗｗ良かった！！幼馴染想いのかずくんもステキでした♪ (2018年11月4日 16時) (
レス) id: a1c0ba5bbc (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - すごくおもしろかったー！キュンキュンきた〜〜！ (2018年6月25日 9時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
大宮譲(プロフ) - 読ませて頂きました！Ｊにｷｭﾝｷｭﾝしちゃいました(///ω///)♪ニノちゃんのお姉ちゃんとJ想いな部分にもキャーってなりました(///ω///)♪最高！楽しかったです！ありがとうございました！ (2018年4月18日 11時) (レス) id: bae0b2e4bb (このIDを非表示/違反報告)
嵐love(プロフ) - 読みました。短いストーリーだったけど主人公ちゃんに激甘の潤君が凄く出てきてキュンキュンしました。(///ω///)♪私的には、少し櫻井君が可哀想だけど潤君と結ばれて良かったです。姉貴想いのニノも好きです。読んだからケーキが食べたくなりました。f(^_^) (2016年3月16日 9時) (レス) id: 124a98dc04 (このIDを非表示/違反報告)
しおなな(プロフ) - さやさん» きっと彼はニヒルじゃなくてそれこそ天使の笑顔でいる事でしょうね。幸せで羨ましい(笑)そしていつも嬉しいお言葉ありがとうございました。また次作でもコメ欄に遊びに来て頂けると嬉しいです。 (2016年3月10日 18時) (レス) id: 5482a94483 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しおなな
| 作成日時：2016年1月17日 20時
