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理性 ページ18

汽車の揺れに身を任せながら、俺は溜息を付いた。

しまった…俺とした事が何をやっているんだ…

額からダラダラと流れ落ちる汗を、隊服の袖で拭った。

よりによってAの誘いに、こうも軽々と頷いてしまうとは…

炭(男として不甲斐ない…)

片手で目元を覆うと、またもや深い溜息を付いた。

『だい、じょ、ぶ?』

炭「あ、ああ…」

Aに笑いかけるも、顔は引き攣ってしまった。

炭(嫁入り前のAの家に、男が軽々しく踏み込むなんて……)

考えれば考える程、罪悪感が襲う。

何とか引き返せないだろうか……。

とは言うものの、汽車に乗ってから随分と時が経っている。

今更引き返すことは難しい。

炭(俺が気を強く持てば済む事なんだ…。大丈夫、俺は長男だから変な事が起こったりはしない!!)

そう自分に言い聞かせていると、トントンと肩を叩かれた。

『たん、じろ。まだ、ごはん、たべて、ない?』

炭「あ、ああ…そうだな。まだ食べてないな」

そう言うと、Aは風呂敷からゴソゴソと何かを取り出し、俺に渡した。

『どぞ!』

差し出されたのは、具材が沢山乗った弁当だった。

炭「わぁ!美味そうだな!いいのか?」

『う、ん!たべて、たべて!』

炭「ありがとう!」

俺は弁当を受け取ると、早速弁当の蓋を開けた。

錦糸卵が乗った酢飯や里芋の煮っころがしなど、色とりどりの具が入っており食欲を唆る。

炭「うまいな!」

駅弁と言うそうで、その他にも種類があるんだとか。

汽車に駅弁、初めての経験が出来て嬉しく思う。

ふと、横から視線を感じ見れば、Aと目が合った。

Aは、美味しそうに頬張る炭治郎を嬉しそうに眺めていた。

炭「……そんなに見られると、何だか恥ずかしいな……」

少し眉を下げて炭治郎が言うと、Aはにまりと笑う。

『ごめ、ん!でも、たんじろ、のたべる、すがた、すき!』

炭「…!!むぐっ…!!」

食べていた物を喉に詰まらせてしまい、思わず呻く。

慌ててAが背をさすり、落ち着かせてくれた。

『だい、じょぶ?』

炭「あ、ああ…!…大丈夫だ」

炭治郎は溜息を付いた。

炭(あんな笑顔であんな事を言われたら……)

不意に向けられたAのそれに、炭治郎は顔を赤くする。

“好き”

その一言が脳内で何度も繰り返された。

炭(何を考えてるんだ俺は!!)

慌てて左右に頭を振り、脳内から掻き消す。

先程まであった自信が一気に無くなり、先が不安になる炭治郎であった。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 恋愛 , 竈門炭治郎   
作品ジャンル:恋愛
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豆大福 - はじめまして!そのようなお言葉を頂けて嬉しいです!体調管理も整えた上で更新します。貴方様もご自愛ください。 (2021年9月17日 23時) (レス) id: dfee756c2e (このIDを非表示/違反報告)
さら - はじめまして!!このお話凄く大好きです!!炭治郎くんめっちゃ大好きです!!お話続き楽しみにしてます!!コロナで大変ですが、お体には気を付けてくださいね!! (2021年9月13日 23時) (レス) id: d237d559b7 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア☆姉貴 - 豆大福さん» 太陽は克服しているため、日中でも外出は出来る。屋敷には藤、薔薇、コスモスの花が植えられている。 (2021年6月2日 18時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア☆姉貴 - 豆大福さん» 青葉の口ぐせは「教えてもらうんじゃない!!!!見て盗め!!!!」 (2021年6月2日 16時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア☆姉貴 - 豆大福さん» そして、漆ノ型の雪の癒しは自分の怪我と味方複数の怪我を癒すため、かなりの体力を消費する。 (2021年6月2日 14時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:豆大福 | 作成日時:2020年8月20日 0時

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