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一体どれほど男と目を合わせていたかはわからない。
逸らした瞬間撃たれると思った。今にも崩れ落ちそうな足を、まだ折れるなと何度も奮い立たせた。
「…はー、わかったよ。俺の負け｣
男は額に当てていたハンドガンを胸ポケットへと戻し、「お手上げ〜」と言いながら言葉通り両手を上げブラブラとさせる。
先程までの殺気立った雰囲気が嘘のようだ。
「無意味な殺しはタブーなんだよ。あんた殺して弟くん連れてったって、お咎めなしなんか無理だろうな」
…つまり、私を殺すことに意味は無いと。
彼にとって私の死は仕事の妨げにしかならないらしい。
「とりあえずあんた連れていくから、家の前に車停めてあるから乗って。ああ、弟とはもう会えないかもしれないから、最後の別れでもなんでも今のうちにしておいたら？」
大きなスマートフォンを耳に当てながら、これが弟との今生の別れであると告げて男は部屋を出ていった。
張り詰めていた緊張が一気に途切れてドサッと崩れ落ちた。ボロボロと涙を流した弟がすぐ横に来て支えてくれた。
「ヌナ、何であんなこと言ったの！」
「あんたが連れてかれたらどうなるかわかりきってるもん。ならヌナが行った方がいいと思ったの」
「だからって！」
「お父さんとお母さんには友達の家にしばらくいるとか、適当に誤魔化しておいて」
「でも…」
「ヌナは上手くやれるよ。絶対帰ってくるから。待っててねハヌラ、」
涙が止まらないせいで言葉が出ないハヌルの頭を数回撫でて、行ってくるねと声をかけて外に出た。
家の前に停められた黒い車の横でまだ誰かと通話していたスーツの男は、私が来たことに気付くと電話を切り、「早く乗って」と告げて運転席に乗り込んだ。
私が乗り込んだことを確認すると、振り向いて「携帯出して」と手を伸ばした。
素直に渡すと男はすぐに出発した。
ゆるやかに発進した車の中から我が家を見つめた。
次いつ帰って来られるか、はたまたもう帰って来られないかもしれない、と必死に脳裏に焼き付けた。
移動中男は一言も話さなかった。
弟の泣きじゃくった顔を思い出して涙が溢れてしまいそうだったので、何も話されなかったのは心を整理させるには丁度良かった。
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ニナ - コメント失礼します！もうストーリーがタイプすぎます！更新楽しみに待っています！ (4月21日 10時) (
レス) id: 86d1e90db7 (このIDを非表示/違反報告)
ユジ(プロフ) - 面白そうな作品です🤭更新楽しみにしてます！😻 (3月4日 13時) (レス) @page6 id: 9c971eb260 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：浅葱 | 作成日時：2024年3月3日 13時
