• ページ20
｢時間はかけたくないので、このまま例の部屋に直行します｣
｢えっ、もう？｣
｢チャンビニヒョンが敵を引き付けてくれてる今がチャンスです。今この付近にはいないはずだから｣
そう言ってスンミンさんが左手に着けていた時計のサイドボタンを押すと、ここ一帯の人感センサーをハッキングしたデータをマップのように見やすくした映像が投影された。これもチャンビニの能力だろう。
「あなたの見立てだと、このまままっすぐ進んだところの階段を上がれば例の部屋なんですよね？」
覚悟を決めたようなそのまっすぐな瞳に見つめられたら簡単に返事をすることも何故か憚られて、ただ頷いた。
「…行きましょうか」
スンミンさんはギュッときつく締められたベルトに備えられていたハンドガンを手にして、引き金を引いていた。
敵がいないことは確認済みだけれど、念には念をと丁度チャンビナから無線が鳴ったばかりだった。
二人が足を進める度に、ガラス片の擦れる音が響く。
ああ、こんなに小さな音にすら神経をすり減らしているなんて気がおかしくなりそう。
冷や汗がツーっと首筋を伝った。
｢…あの部屋ですね｣
｢慎重に入りましょう｣
ゴク、と生唾を飲み込んでスンミンさんの後ろについてドアを開けた。
見取図で見ていた通り私たちが入ったドアの少し前方にもう一つドアがあった。あと二つドアがあることはわかっているから、あとは警戒を怠らず部屋に向かうだけ。
二枚目のドアもおかしな仕掛けが発動することなく通過でき、三枚目のドアに手を掛けた、その時。
「あんたらだれ？」
後ろからガチャリ、と物騒な音がした。私の後頭部に冷たい何かがあてられている。
しまった、構成員だ。ずっとレーダーを確認していたし、反応もなかったのに！どうしよう…！
体がブルブルと震える。冷静な判断ができない私の腕をグイッと引っ張って、スンミンさんが前に出た。
「お前は？」
「んー、跡取りってやつかな」
ハハハ、と全く感情のこもっていなさそうな笑い声が響いた。男は何も気にしていないかのように、それでも銃から手を離すことはなかった。
男はこちらをジーッと見た後、何かを思い出したかのように手を鳴らした。
｢あんたもしかしてStrayKidsのとこの坊？そうでしょ？昔うちの出来損ない貰ってくれた！｣
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 575人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ニナ - コメント失礼します！もうストーリーがタイプすぎます！更新楽しみに待っています！ (4月21日 10時) (
レス) id: 86d1e90db7 (このIDを非表示/違反報告)
ユジ(プロフ) - 面白そうな作品です🤭更新楽しみにしてます！😻 (3月4日 13時) (レス) @page6 id: 9c971eb260 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：浅葱 | 作成日時：2024年3月3日 13時
