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あの日の勇気ある行動がきっかけで、私とハンくんはみるみる仲良くなっていった。
最初はぎこちなかった会話も今ではお互い冗談を言い合うくらいにまでなっていて、ハンくんの小さい頃の話や大好きなアーティストの話、バイトに関係ない話もたくさんした。
そんな彼の話を聞くのが好きで、シフトが被っている日があるとその日が待ち遠しくて仕方なかった。
急激に仲良くなった私たちを怪しんだチャンビンさんが「お前ら付き合ってんの？」と聞いてきたことがあったが、私たちが驚いて固まっているのを見て「いや、ないか」と立ち去って行った。
…私はともかく、ハンくんに失礼だ。
今日は既に退勤時間まであと1時間あまりだが、今日は近くの商店街で秋祭りがあるとかでお店には閑古鳥が鳴いている。
何もしない訳にもいかないので、時間潰し用に置いてあるクーポン券が印刷された紙とハサミを持って腰掛ける。私の不器用メーターが振り切っているのか、ハサミで切っているにも関わらず手でちぎったかのような切り口になってしまった。
「クーポンがゴミになっちゃった…」
昔から美術や図工は大の苦手だったがまさかこんな簡単なことも出来ないとは…と項垂れていると、「先輩でも苦手なことあるんだね」とハンくんが現れ、私の向かいに腰を下ろした。
「自分ではちゃんとやってるつもりなんだよ」
「わかってるよ笑、あとは俺がやるね」
貸して危ないから、と私が手に持っていたハサミを受け取り、1つずつ丁寧に切っていく。
すると奥からガタガタと騒がしい音がして振り向くと、チャンビンさんが着替えを終えて大荷物を抱えて出てきている。そういえばバイトが終わったら友人の出店を手伝うとかなんとか言っていた気がする。
同じテーブルにいる私たちを見て、「おいおしどり夫婦！俺もう帰るから店閉め頼んだぞ！」とだけ言い残して出ていった。
「ちょっ、チャンビニヒョン！？」
「お、おしどり夫婦、」
「俺と先輩が？」
「かな…？」
「まったくあのヒョンは…」
大袈裟に頭を抱えている姿をみて、やっぱり迷惑なんだ、と感じる。
あんな揶揄い方ハンくんに失礼だなんて思っていたけど、本当に嫌だと思われていたら、ちょっと悲しいな、なんて。
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作者名：浅葱 | 作成日時：2023年9月25日 12時
