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バクバクと脈打つ心臓の所為で失いそうな正気を必死に保つ。冷静になれ。
とりあえず、客観的に見てももう彼は飲み会には戻れなさそうだ。
どうしようか…
ポケットの中の携帯が振動し、液晶画面には【チャンビンさんからメッセージを受信しました】と表示されている。
チャンビンハニ大丈夫そう?
Aもう戻れなさそうです。どうしましょう?
チャンビンタクシー呼ぶから送ってやって。お前も一緒に帰りな。
少ししてチャンビンさんが荷物を持って出て来てくれた
もうほとんど眠ってしまっているジソンくんを見てくくく、と笑うとペチペチと頬を軽く叩く
「やーハナ、大丈夫かー？」
「んぅ〜…、ひょん…」
「飲み過ぎだっつーの、ったく…」
やや呆れたように笑うチャンビンさんだが、その笑顔には弟が可愛くて仕方ないというような感情も含まれているように感じる
ジソンくんがこんなんじゃ一人で待たせるのは危ないと、チャンビンさんはタクシーが到着するまで一緒に待っていてくれた
タクシーが到着し、ジソンくんを後部座席に放り込むまでの一連の動作が妙に手慣れていて、お酒の強いチャンビンさんは今まで何人もの酔っ払いを介抱してきたんだな、と彼のポジションを少し哀れに思った。
ぐっすり眠っているジソンくんの隣に自分も乗り込むと、チャンビンさんはこれで、と運転手さんに5万ウォンを差し出す。
「チャンビンさん！？」
「今日無理やり来てもらったし、俺の友達も酔ってたとはいえ迷惑かけたからな。無料タクシーが慰謝料だと思って、こんなんで悪いけど」
「いや、でも」
「それにさ」
食い下がろうとするとそのままチャンビンさんは続ける。
「今日、ハニ自分から行くって言ったんだよ」
「え、なんで…」
「さあ？他の男に取られたくない奴でもいたんじゃねえの〜？ま、俺は詳しいこと知らないけどー」
ぶわわっと顔が赤くなったのだろう、チャンビンさんは心底可笑しいと私を指さして笑う。
「さ、帰った帰った。あ、襲うなよ？」
「なんてこと言うんですか！」
じゃあなーと手を振って彼は店に戻って行った。隣のジソンくんには今の会話は全く聞こえていないだろう。
今日来た理由を私が知っていると彼が知ったら、どんな反応をするのだろうか。揶揄ってみたいなんて悪戯心が湧くのを必死に抑えて、運転手さんに行き先を伝えると、ゆっくりと車は発進した。
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作者名：浅葱 | 作成日時：2023年9月25日 12時
