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チャイムを押してからしばらくしてドアから溢れる音が止まり、その少し後「…はい?」とインターホンから少し低い男性の声がした。
「あの、隣の者ですけども!ちょっと音大きくないですか!?」
「あー、え、そうですか?」
「そうです!ずっと気になってましたけど今日はさすがに言わせてもらいます!凄いです音!」
慣れていないことをするもんじゃなかった。きっと今の私はアドレナリンが出きっていて、フンフンと鼻の穴が広がっている気がする。知り合いに見られたら恥ずかしい顔をしているはずだ。
「……すみません。気をつけます」
「あっ、はい…」
隣人ハンは思いの外大人しく注意を受け入れてくれたようだ。こういう曲が好きな人はちょっと気性が荒いのかと思っていた。とてつもない偏見だが。
当然ながらその後は全く音が聞こえてくることはなく快適だった。
直後は、マンションの住人のために良いことをした!と半ば自分を英雄かなにかと思っていたが、段々と余計なことをしたのではないか、もし後から逆恨みされたらどうしよう…なんて考えがよぎってからはベッドに入っても中々寝付けなかった。
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作者名:浅葱 | 作成日時:2023年9月25日 12時