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「まあ…、良い人だなとは思ってるよ。それだけだから」
スンミンやヨンボクには既にジソンくんのことが好きだとバレているが、自分から話したわけじゃない。事情を知らない間はしらばっくれていたって問題ないだろう。
「…ふーん」
もうこれ以上聞いても答えて貰えないとわかったのか、ヒョンジンはストローを咥えてオレンジジュースを飲んだ。
近頃の彼は飲み会以外はいつもオレンジジュースを飲んでいる気がする。もともとはアメリカーノをよく飲んでいた気がするが、好みが変わったのだろうか。
「ヒョンジンって最近オレンジジュース飲んでるよね。コーヒー大好きだったのに」
「え？ああ、そういえば、そうだね…」
自分でも気付いていなかったのだろうか、ヒョンジンは何故かオレンジジュースを見つめたまま考え込んでしまって、会話が止まってしまった。
「本当に大丈夫？体調悪い？」
「だっ、大丈夫！ご飯まだかな〜！…あは、」
さっきから感情がコロコロと変わって忙しない。
幸いにもその後すぐに注文した料理が届きヒョンジンは目を輝かせていたので、気は逸れたようだ。
お店を出ると既に時刻は21時を過ぎていた。
ヒョンジンは家まで送ると言ってくれたが、この前ジソンくんに泣きながら弁明して数日しか経っていない。今日はお酒を飲んでいないとはいえ、少しでも疑われるようなことはしたくない。
ヒョンジンの善意を跳ね除けるようで申し訳ないが、自分の保身のために一人で帰る事を選んだ。
ヒョンジンはまた怪しいものを見るような目で「あの人に見られたら困るからでしょ」と核心突いたことを言うので、近いから平気だよと伝えるとしぶしぶ頷いた。
「…ちゃんと帰ったらカトクして」
「本当に近いから心配しなくても大丈夫だって」
「俺が安心したいからそうして！いいね！」
じゃあね！と背を向けて歩いていくヒョンジン。
なんだか今日はいつもの彼とは違いややぎこちなかったが、まあ喧嘩の後はこんなものだろう。ご飯を食べている間はいつもの如く顔を皺くちゃにして美味しそうに食べていたし、問題ないはずだ。
何事もなく家につき、約束通りヒョンジンへメッセージを送る。シャワーを浴びた後携帯を確認するとヒョンジンから【また二人でご飯行こう。次は送らせて】と返事が来ていた。
ヒョンジンの優しさを私が断ったのにも関わらず彼は次も一人で帰らせる気はないらしい。
あのルックスにこの性格で恋人が居ないのだから不思議だ。
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作者名：浅葱 | 作成日時：2023年9月25日 12時
