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「ヒョンジナ、この前はごめん。今日は好きなもの頼んで!」


あれから数日、ヒョンジンに謝るため初めてわざわざお互いに予定を合わせて会う約束をした。いつもスンミンやヨンボクと遊びに行けば、必ずヒョンジンが隣に居たからだ。



「…何言ってんの、俺が出すよ」
「あの日家まで送ってくれたのに怒鳴りつけたんだよ私…、なんでヒョンジンが払うの」
「どんな理由があれAに出させるほどダサくないよ俺」
「…あそう。…いや、でも前奢れって」
「いいから」


早く頼みなよ、それ好きだったでしょ?と開かれたメニュー表を顎で指す。このお店にはスンミン、ヨンボクと4人で訪れたことがあり、その時に食べたグラタンがとっても美味しかったのだが、まさか覚えているなんて。確か以前来たのは半年くらい前だった気がする。


ヒョンジンはそのまま注文までしてくれたのであとは料理が運ばれてくるのを待つだけなのだが、いつもはお喋りのヒョンジンが口を噤んでおり、表情は少し暗い。



「ヒョンジナ、私が聞くのも変だと思うけど、なんかあった?」
「…なんで?」
「なんかいつもより元気ないなって思って。やっぱりこの前の私のせいだよね、本当にごめん」
「Aのせいじゃない…、いや、そうなのかな」


全面的に自分が悪いと自負しているので、はっきりお前のせいで気分が悪いと言われても受け止める覚悟はあるのだが、妙に歯切れの悪いヒョンジンに、どこか不安になる。


言おうか言わまいか悩んでいる様子のヒョンジンだったが、意を決したように俯いていた顔を上げて目が合う。



「あの日さ、隣の部屋から出てきた人いるじゃん。…知り合い?」
「…それ知りたいの?」
「だって気になるじゃん!あの人がどっか行ってからAの様子おかしくなったし!」


ヒョンジンから見てもあの日の私はジソンくんの一挙手一投足で左右されていたらしい。
確かに、急に落ち込んだり怒ったりすれば知り合いなのかと考えるだろう。

私はヒョンジンへただシンプルに、隣人でありバイト仲間であると伝えた。それでもヒョンジンはあまり納得していないようだった。


「絶対それだけじゃないでしょ、あの人のこと好きなんじゃないの?」




何故か少し睨んでくる。だがそこまで話す筋合いはないはずだ。
しかしいつものような受け答えをしてしまったら、今度こそ本気で彼は拗ねてしまうかもしれない。ここは慎重に返事をしなければ。



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作者名:浅葱 | 作成日時:2023年9月25日 12時

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