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ジソンくんはそれ以上聞いてくることはなかった。寧ろ、彼にここまで問いただされたのはこれが初めてだった。
涙の跡が頬に幾つか残っていた様で、彼は優しく拭ってくれる。
「あーあー、こんなに冷たくなって。だめじゃん女の子が身体冷やしちゃ」
私の頬が予想以上に冷えていたのに驚いたのか、私を立たせて早く家に入って身体を温めなさいという。
「…ちゃんとわかってくれた?私本当にそういうことしてないからね」
「はいはい!てかAはそういう子じゃないってわかってる。だから大丈夫」
「…うん、ありがとう」
何とか最悪の状況を脱する事はできた様だ。
安堵したせいか一気に寒さの感覚が身体に押し寄せてきて、身震いと鳥肌が止まらない。
「まじで早く家入んないと風邪ひいちゃうよ。うちで何か温かいもの出してあげたいけど、ジョンイナがもう寝ちゃってるから」
「ジョンインくん来てたんだ」
「うん、疲れてたみたいで、来た瞬間爆睡」
はは、と笑顔を見せてくれたので良かった。
じゃあ入るね、また明日と挨拶をして部屋に入る。
暖房なんて付けていないのに、風がないだけで部屋の中はとても暖かく感じた。
ヒョンジン 不在着信
ヒョンジンさっきはごめん
ヒョンジンゆっくり休んで
昨夜の連絡はヒョンジンからだったようだが、それに気付いたのは翌朝の事だった。
彼とは常に小競り合いをしているが、昨日の様に怒ってその場を立ち去る様な、お互いカッとなってしまう喧嘩をしたのは初めてだった。
いつも私には憎まれ口を叩くヒョンジンだが、普段は心の優しい人だ。全面的に非があるのは私の方なのに、きっと私に酷い事をしたと気にしているのだろう。
次大学に行ったら彼にもごめんと、それからありがとうを伝えなければ。
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作者名:浅葱 | 作成日時:2023年9月25日 12時