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ヒョンジンが帰ってからどれくらい経っただろうか。
鍵は鞄の奥底に隠れていたのを見つけ出すことが出来たが、まだ家の中に入る気になれない。
なんとなく、独りになったら泣いてしまいそうだったからだ。マンションの前を通り過ぎていく人の足音でも人の気配を感じられるなら何でも良かった。
それにまだジソンくんも戻ってきていない。
今すぐに話さないとダメだと思った。何かに呆れたような、あの時のジソンくんの目が忘れられなかったから。
メッセージアプリを開いて何処にいるのか聞こうかと思ったが、何となくやめておいた方がいいような気がして、ただ彼が戻ってくるのを待つことにした。
もう夜は大分冷え込む季節になっていて、5階の高さに吹き込む夜風が身体を振るえさせるので、身体を冷やさないようしゃがみこんで小さくなった。手にはあ、と息を吹きかけると思いのほか暖かい。
ポケットの中で携帯が小さく数回振動した。
誰かからメッセージが届いた様だった。確認するべきかと思ったが、そんな気分にはなれなかった。
「…さむい」
心なしか吐く息も白くなってきた様な気がする。風邪を引いてしまったらバイトに行けなくなってしまう。明日はジソンくんとシフトが被っていたはずだ。
…電話をかけてみようか。これで出なければ、もう弁明できる機会はないだろうな。
先程届いていたメッセージアプリの通知なんてそっちのけで、連絡先からジソンくんを探して発信ボタンを押す。呼び出し音がやけに耳に響いた。
5コール、7コール鳴ってもジソンくんは出ない。
…10コール目も取ってもらえなかったら、もう諦めようか。
10コール目がもう鳴り終わる。
私の片想いもこれで終わりか、そう思った時、プツッとコール音が切れて、
「…もしもし？」
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作者名：浅葱 | 作成日時：2023年9月25日 12時
