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「A〜、ちゃんと歩いてよ〜！」
「ん…、ぁるいてるよ〜？」
「嘘ばっかり…」
よいしょよいしょとヒョンジンは私をおぶって運んでくれている様だった。目は覚めたもののまだアルコールが抜けきっていなくて、状況が上手く掴めない。
「ここどこ…？」
「Aのマンションもうすぐだよ！ほら！しっかりして！」
言われてみれば確かに見慣れた風景が続いている気がする。三人で飲んでいたあのお店から近くないのに、家まで送ってくれたんだ。
マンションについてエレベーターに乗り込み、腰に手を当ててふぅ、と息をつくヒョンジン。
「ヒョンジナありがとう…ごめん迷惑かけて」
「Aがあんな酔うの珍しかったからびっくりしたよ。まあ次なんか奢って」
「もちろんです…」
五階につきエレベーターから降りようとするも、身体にアルコールが残っているせいでやけにふらついてしまう。見兼ねたヒョンジンは部屋の前まで送ってあげるから、とまた支えてくれた。
「あれ、鍵…」
部屋の前について鞄の中を漁るも、なかなか鍵が出てこない。
ヒョンジンはガサゴソと鞄を探る私を見て、鍵なくしたの？と一緒に鞄を覗く。
その時、ガチャっと隣の部屋のドアが開いて、財布と携帯だけ持ったジソンくんが出てきた。
私を見て一瞬驚いた顔をしたあと、何故かだんだんと無表情になっていく。
挨拶をするため手を挙げようとしたが、ふとこの状況を客観的に考えた。
顔が赤くなるくらい酔っている私と、私を両腕で支えるヒョンジン。そして今から家に入ろうとしている距離の近い男女の図。
こんなの何も状況を知らない人が見たら、そういう関係のにしか見えないはずだ。
ジソンくんにそんな女だと思われたくない。まずい。私たちの間には何もないと伝えなければ。
ジソンくんに説明しようと口を開くも、焦って滑舌が仕事をしない間に、「A、早く鍵出して」とヒョンジンから放たれた極め付きの一言で、ジソンくんは会釈だけして私の横を通り抜けて行った。
取り返しのつかないことになったかも。力が抜けてその場にしゃがみ込んでしまう。
「…っぁああ〜…っ」
「えっ、何どうしたの？気持ち悪い？」
「もう終わりだ…」
「だから何が！」
「ヒョンジンのバカ！」
「はあ！？まだ酔ってんの！？」
もう知らない！とヒョンジンはしゃがみ込んだままの私を置いて帰ってしまった。八つ当たりをしてしまったし、相当怒らせたかもしれない。
「最悪だ…」
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作者名：浅葱 | 作成日時：2023年9月25日 12時
