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「ごめんA、待った？」
「ぜーんぜん。私も今来たとこ」
少女漫画でお決まりの台詞を並べているが、私とヒョンジンの間にそんな空気は一切感じられない。
なぜ私がヒョンジンと待ち合わせをしていたのかというと、今日はヨンボクが出場するテコンドーの大会があるからだ。
本当はスンミンも一緒に行く予定だったのだが、どうしても外せない用事が出来てしまったとかでヒョンジンと二人で行くことになったのだ。
「ヨンボク、緊張してないかな」
「意外と肝据わってるからね〜、大丈夫なんじゃないかな」
最寄り駅から会場まで徒歩で約10分ほど。
その間ヒョンジンとはヨンボクについての話題かほとんどだった。この間宅飲みをしたらチューハイ二本で潰れてしまっていたとか、話題の恋愛映画を見に行ったら開始10分で号泣していたとか、そんなたわいも無い話。
会場に着くと、試合開始1時間前までであれば選手控え室に入ってもいいと案内板が出ていたので、試合時間を確認してまだ大丈夫だね、とヒョンジンと控え室に向かった。
黒髪からトレードマークの金髪へ戻り選手陣でより一層目立つヨンボクは、ジィーっと対戦表を眺めていて私とヒョンジンに気づかない。
「ヨンボガァ〜、ヒョンジンちゃんが来たよ〜」
「Aちゃんも来たよ〜」
ヒョンジンにつられてつい大きな声を出してしまった。周りの選手やその他関係者数名に見られてしまって恥ずかしい。
「二人とも！来てくれたんだね！」
「ヨンボギの晴れ舞台だもん、当然来なきゃ」
「俺カメラ持ってきたから何枚でも撮るよ」
「こういう時じゃなくてもヒョンジニはいつも僕のこと撮りすぎなんだよ、笑」
少し硬い表情をしていたヨンボクだったが、相変わらずなヒョンジンのお陰で少し和らいだようだった。
試合前なのにも関わらずヒョンジンはヨンボクの写真を撮り始めてしまったので、1人退屈になってしまった私は先程までヨンボクが凝視していた対戦表を見てみることにした。
素人の私は選手の名前を見ても全くピンと来なかったが、たくさんの選手の中で【양 정인-ヤンジョンイン-】という名前が目についた。
最近仲良くなった彼と同じ名前じゃないか。珍しい名前だと思っていたが意外といるんだな…
道着姿のヨンボクを撮り終えて満足したらしいヒョンジンが自分を探す声がしたので、対戦表を眺めるのもそこそこにして、二人の元へ戻って行った。
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作者名：浅葱 | 作成日時：2023年9月25日 12時
