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気づけばもうすぐ日を跨ぐ頃になっていた。
最初は楽しそうに話していたジョンインくんも、今では時折相槌を入れるだけで、その上半身は大きく船を漕いでいる。

時間も時間なのでそろそろお暇させてもらうことを伝えると、ジソンくんは玄関まで送ってくれると言った。


靴を履いているとジョンインくんがトコトコと目を擦りながらやってきて、「またね、ヌナ…」と挨拶だけして奥へ戻って行った。


「あいついつの間にヌナなんて」
「まだ起きてた時に呼んでもいいか聞かれたよ」
「そうなの?油断も隙もないな…」
「弟ができたみたいで嬉しいけどね」

そういうと、そっかとジソンくんは笑っていた。


「じゃあ帰ります。遅くまでありがとう」
「こちらこそ」
「じゃあまたバイトでね」


すぐ隣なのになんだか帰るのが名残惜しいな、なんて思ってしまって、だめだだめだと考えを振り払って一歩を踏み出した時、すぐにジソンくんに呼び止められる。

振り返ると彼は少し緊張した面持ちで、言葉を繋ごうとしたり辞めようとしたり忙しない。



「…俺の曲、聴いたって言ってたよね」
「バンチャンさんが聴かせてくれたの。仲直りするためにきっと必要だからって」
「…チャニヒョン、俺らがぎこちなかったの知ってたんだ、」
「私が相談したんだ。どうしてもジソンくんと仲直りしたくて。」


ジソンくんは少しびっくりした様子だったが、じわじわと首や耳が熱をもって赤くなっている様に見えた。


「そ、っか。…どう、だった?俺の曲」


ジョンインくんとの会話でもう答えを知っているはずなのに改めて評価を求める彼は不安そうだが、可愛くて仕方ない。



「最初はね、なんだろうこの曲って思った」
「えっ…」
「当たり前みたいにすっと自分の中に入ってきて、曲が終わってもずっとメロディーを口ずさんじゃうの。だから何回もまた聴きたくなって、」


バンチャンさんに聴かせてもらったあの曲を思い返しながら素直に自分の思っていた事を伝えると、気づけば彼はより一層赤くなっていて、「もういいから…恥ずかしくて死ぬ…もう顔見れないからまた明日!」と逃げる様に戻って行った。
最後まで律儀に挨拶をするのが彼らしくて、思わず笑みが溢れた。

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作者名:浅葱 | 作成日時:2023年9月25日 12時

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