Don't cry, my music (ページ4)

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ハンくんの出勤初日。
早めに行こうと思い出勤時間の15分前に着くと控え室にはすでにハンくんの姿が。
急にドアが空いたことに肩を上げて驚いていたが、私に気づいてより気まずそうな表情をする。

「早いね」

「おはようございます…」

「おはよう。今日からよろしくね」

ハンくんの目を見ながら言うと、一瞬合った視線を焦るように逸らし、コクっと頷いて黙ってしまった。人見知りの扱いは中々に難しいらしい。

今日は開店の9時から15時30分のシフトだっため、開店準備、注文の取り方、バッシング等説明し、実際にしてもらうことで慣れてもらえた思う。

ハンくんは少し疲れた表情をしていたが、これくらいの疲労感は人見知りであれ接客業を選んだ以上乗り越えてもらわないとならない試練だと思いあえて触れず、初日お疲れ様でしたと少し早めに退勤してもらった。

ハンくんは地頭がいいのか物覚えもいいし、周りへの気配りも出来ていた。初日でこれなら逸材なのだろう。
ただ一つ問題点があるとするなら、コミュニケーションが取れない。それはもうびっくりするほどに。
それはしかも私に限ってのことらしく、一つ上のチャンビン先輩とは初日ながらに既に打ち解けていて、とっても楽しそうに話している。

…羨ましいなんて言うつもりはない、
ただ私にももう少し愛想良くしてくれたら…

今まで対人関係で困ったことはなかったので、初めてのことに21歳にして困惑している。
本当にどうしたものか…

帰り道もうーんうーんと唸っていたらいつの間にか自宅マンションの前までたどり着いていた。
エレベーターを降りて自分の部屋の前に向かうまでの間で既に、あの騒音が鳴り響いていた。

「…いやいや、冗談だよね？」

さすがにここまでの大音量は初めてだ。驚きを隠せず、ついつい隣人の部屋の前まで小走りで来てしまった。
この数ヶ月の中でとびっきりの音量で鳴り響くそれは、2つ3つ先の部屋まで間違いなく届いているだろう。

バイトのハンくんといい隣人のハンといい、ハンにはろくな奴がいないのか！？
苛立ちと、妙に沸き立った正義感のせいで、私は気付いたら隣人のインターホンを押してしまっていた。

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