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いざジソンくんを見ると、未だケーキに手をつけておらず、ただじっと私のことを見ていた…のだろうか。目が合った途端にぱっと逸らされた。まさにデジャヴというやつだ。
「ケーキ食べないの?」
「…食べる。でもその前にさ、話したいことがあって」
「話したいことって…、あれ、だよね」
「うん。俺たちの家が隣同士で、尚且つ前に音が大きいって注意しに来てくれたことについて」
…あぁ、まさかジソンくんから切り出してくれるとは。先ほど固めた覚悟が崩れてしまいそう。何としてでもまずは自分が謝らなければ。
「あっ、あのね、わたし謝りたいことが」
「A待って!!!」
大きな声で牽制され、思わず肩が跳ねてしまった。何か機嫌を損ねてしまう様なことをしてしまっただろうか。
するとジソンくんは恐る恐る震える手である場所を指差した。
「いる…、奴がいる!!!」
「奴…?」
「黒くて大きくてしぶといあいつだよ!!」
「あいつって…、え、もしかして」
大袈裟なくらいに振り向くと、私の後ろの壁をつたう【奴】がすぐ側にいた。
ジソンくんは私に箒を渡してくるがそれ以降全く奴に近づこうとしない。私ももちろん奴が心の底から苦手なのだが、こうも討伐を任されては引くに引けない。二人でぎゃあぎゃあ言いながらなんとか奴を隅に追いやってスプレーを振りかけると、次第に動かなくなった。
しかしこの時点で既に体力を使い果たしていた私たちは後始末まで手が回らず、大きな声でバンチャンさんを呼んだ。
私たち二人の話し合いが無事に終わったのだと思い入ってきたバンチャンさんは、ボロボロの私たち+生き絶えた黒い物体を見て、色んな意味で肩を落としていた。
「A、ごめん力になれなくて…」
「うん…、こればっかりは仕方ないよ…」
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作者名:浅葱 | 作成日時:2023年9月25日 12時