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すでに15時を回っている。
ジソンくんはとっくに出勤してきているが、お互いにものすごくぎこちなさが漂っていて。
「…ごめん、通ってもいい？」
棒立ちの私の後ろをダンボールを抱えて通りたそうにするジソンくんが申し訳なさげに言う
「ごめん！手伝うよ」
「いやいいよ、重いし」
「…そっか、」
そっか、じゃないだろう。ここで引き下がらなければ話せたかも知れないのに。
もう何度もこの調子でチャンスを無駄にしてしまっている。バンチャンさんにあんなに背中を押してもらったのに…！いざという時勇気が出ない自分が嫌になる。
そんな自分を見兼ねてか、バンチャンさんは私とジソンくん二人に休憩する様言ってくれた。
「え？でも俺まだ来てから2時間しか経ってないけど…」
「いいからいいから。ケーキでも食べてさ、ゆっくりしてきな。忙しくないし」
「ケーキ？ヒョンどうしたの？」
「いいから！」
背中をぐいぐいと押され半ば強引に休憩に行かされる。控え室に入ってからも何が起こっているのかさっぱりわかっていないジソンくん。
何も気にしていないフリをしてケーキ食べる？と聞くと、初めてシフトが被った時の様に黙ってコクっと頷いたので、二人で腰掛ける。
目の前に座るのは何となく違う気がして、一つずらして斜めの位置についた。
三年も働いているのに見覚えのないケーキだなと思っていたが、どうやら明後日から出す新作ケーキだったようだ。
新作はいつも提供開始期間になるまでバンチャンさんとチャンビンさん以外の店員が食べれる機会は滅多にない。
今回は特別、ということなんだろう。ならより頑張らなければ。
ケーキを全てたいらげたら力が湧いてきた気がする。
覚悟を決めて顔を上げた。
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作者名：浅葱 | 作成日時：2023年9月25日 12時
