24 ハンside ページ24
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「あ、ハニヒョンおかえり〜」
「ジョンイナ…、お前また来たの?」
去年奮発して買ったゲーミングチェアで胡座をかきヘッドフォンを着けてPCの前でふんぞり返っているこいつは、自分がお世話になっている先輩、というか幼馴染の弟だ。イコールこいつも幼馴染になる訳だが。
小さい頃からずっと一緒に過ごしてきたが、引っ越してからもそれは当たり前の様に続いており、勝手に合鍵を作ったりとそれはもう自由気ままな奴だ。
「なに今更。僕がヒョンの家にいることなんてもう当たり前でしょ、合鍵持ってるんだよ?」
「お前が勝手に作ってきたんでしょうが…」
はあ、と二度目の大きな溜息が出る。ジョンインのおふざけにも付き合う気になれず、ただただ肩を落とすばかり。普段とは違う自分にジョンインも流石に気付いたようで。
「ヒョン、何かあった?」
大きな目をくりくりとさせて聞いてくるので、つい口が滑ってしまう。あまりこいつには話したくないのに。
「…あのさ、前同じ階の人に怒られたって言ってたじゃん。」
「ああ!あの女の人ね!僕そんなに大きい音出してたかな?でもすごく顔怖かったからあれ以来ちゃんとヘッドフォン付けるようにしてるよ」
えっへん、と効果音が付きそうなくらい威張っているが、数週間前家主不在の際、マンションの住人に音が大きいと文句を言われたそうで、自分の帰宅後涙目で報告してきたのだ。
「それって隣の部屋のお姉さんだった?」
「うん。隣人ですけどって殴り込んできた」
「…はぁ。」
溜息を三回つくと破産するというが、自分の場合は失恋だろうか。
「お前もうちょっとご近所のことも考えなさいね…」
「だって!ヒョンが感想聞かせてって言ったんじゃん!新しい曲できたからって!」
「その時はそうだったかも知れないけど、その前からうるさかったんだろ!?」
「あぁーもううるさい!掘り返さないでよ!」
この話これで終わり!とジョンインは再びヘッドフォンをはめてしまった。
何度話しかけても反応がない。自分の声を完璧にシャットアウトしているようだ。少し機嫌も悪かった様だし、おおかたここに来る前に兄貴、基リノヒョンに小言でも言われたんだろう。
自分の言葉は無視するくせに、一丁前に空腹だという知らせだけはしてくるので、冷凍のチャーハンを温めてジョンインの前に置くと、小さくありがとう、と聞こえた。
まったく、可愛いやつだ。
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作者名:浅葱 | 作成日時:2023年9月25日 12時