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やっと仲良くなれた人だったのに、知らなかったとはいえとても失礼な態度で物申してしまったこと、つい先日思いもよらない形で隣人であったことが発覚してしまいどう接したら良いかわからないこと
最後まで一息で話し終えたら喉が渇いて目の前のミルクティーを一気に飲み干してしまった。
まだ中の方は熱かったようで軽く噎せてしまう。
チラッとバンチャンさんを見るが彼は話を聞く前から表情を崩さず、あまり驚いてはいないようだった。
意外だと思った。いつもの彼なら目を大きくして驚くような話なのに。
「なるほどね。うん、話を聞かせてくれてありがとう」
「急にすみません…。どうしたら良いと思いますか?」
「…あのねA、驚かないで聞いてほしいんだけど」
「…驚く?なんですか?」
バンチャンさんは少し緊張したように大きく息を吐いて、薄い唇を開いた。
「その隣人ってさ、もしかしてハニ?」
「…え?」
「ハニだよね?」
…どうして知っているんだ。私の説明の中で、ジソンくんだと特定できるフレーズがあったのだろうか。全く憶測がつかず、答えることができなくてただただ目が泳ぐ。
「ごめんね、実はハニからも似たようなこと聞いてて。そんな事あるわけないって思ったけどもしかしたらAとハニのことなんじゃないかって…。その感じだとどうやら当たってたみたいだね」
世間って狭いね、とバンチャンさんは笑うので私もつられてただ渇いた笑いを発することしかできない。
ジソンくんはバンチャンさんになんて伝えていたんだろう。バンチャンさんは何か話してくれていたけど、心ここに在らずで全く感情のない返事しかできない。
それを見越してか、バンチャンさんは「ちょっと待っててね」と言って席を外した。
空になったティーカップを眺めていたらすぐにバンチャンさんは戻ってきて、「これ着けてみて」と言われて差し出されたのは、最近にしては少し古い型の音楽プレーヤーだった。
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作者名:浅葱 | 作成日時:2023年9月25日 12時