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「…呼んでも良いの？」
「うん、お願い」
私の目を真っ直ぐ見つめてお願い、だなんて。
初めて会った日の彼と目の前の彼は本当に同一人物なんだろうか？
天性の人たらしなのだろう、彼の能力は恐ろしい。
「…ジソンくん」
「…ん、ジソンくんです」
「ちょっと、笑」
「Aに名前で呼んでって言われたとき何でかわかんないけどめちゃくちゃ緊張してさ。同じこと仕返ししてやろーって思ったんだけど、なんか、呼んでもらえて嬉しかった。何してんだろね俺」
はにかみながらありがとう、と言ってゆっくり手を離してくれた。繋がれていた場所が熱を帯びていて火傷しそう。
お互い照れて付き合いたての男女のような空気が流れてしまって余計に恥ずかしい。
「か、帰ろ！」
急に立ち上がったせいでおお、と驚かせてしまったが「うん、帰ろ」と彼も立ち上がる。
駅まで並んで歩き、着いたところで路線を聞くとどうやら同じだったようで、そのまま二人で電車に乗り込んだ。
降りる駅に電車が到着し、じゃあまたバイトでと声を掛けたらハンくんも降りようとしていて、こんなことある？と笑い合った。
この際だから家まで送るよと言ってくれたので素直に受け入れ、私を主導にして歩いていく。
最初は「俺もこの道通ってる」「ここで曲がるの？俺も」と私たちがご近所であることが判明し楽しく話していたのだが、どんどん家に近づくにつれてハンくんの口数が少なくなっていってる、気がする。
疲れてしまった？それともこの辺りは街灯が少ないから怖くなった？考えているうちにマンションに到着してしまった。
「ここ！送ってくれてありがとね」
「…なんとなく予感はしてたんだけど」
「ん？」
予感がしてたと言うものの、本当に信じられないというような表情をしているので全くもってチグハグだ。一体なんの話をしているのだろうか。
「俺もここに住んでる」
「…ぁ、……え！？」
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作者名：浅葱 | 作成日時：2023年9月25日 12時
