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「先輩、気にしなくていいからね」
「…え?なにを?」
「さっきの、チャンビニヒョンの。」
「ああ、うん。気にしてないよ」
「ほんと?先輩暗い顔してたから、嫌だったかと思って」
彼はよかった、と言ってまた作業に取りかかる。
嫌だと思ったのはハンくんの方でしょ、なんて言えたら少しは楽だったかも知れない。
…本当はわかってる。どうしてこんなちょっとしたことで自分か傷ついてるのか。
わかっててわからない振りをしているんだ。だって望みが全然無いんだもん。なら自分の気持ちに気付かないふりだってしても良いでしょ?
「ねえ先輩、これ何枚切ったらいいの?」
ハンくんは私を名前で呼んだことがない。いつも”先輩”って呼ぶんだ。
バンチャンさんやチャンビンさんのことはヒョンって呼んでるくせに。
もしかして私の名前知らないのかな?仕事中も皆から名前で呼ばれているからハンくんの耳にも入っているはずだけど、知ってるのに呼ばないのはやっぱり呼びたくないから?
嫌なことばっかりあたまの中でぐるぐる考えて、パンクしそう。
「先輩…?」
返事をしない私を不思議に思ったのか、上目遣いでそーっと覗き込んでくる。
…あぁ、もう。
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作者名:浅葱 | 作成日時:2023年9月25日 12時