Don't cry, my music (ページ1)

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うっすらと意識を飛ばしかけていた金曜日の夜0時過ぎ、壁の向こうから漏れ出す重低音で私の睡眠はあっけなく妨げられた。

…また始まった。

「もう！」

枕に顔を押し付け耳を挟みこみ、少しでもマシになれと願う。大きな枕を買ったのはこんなことに使うためじゃないのに。

かれこれ2ヶ月くらい前だろうか
私が入居してから1年半なぜかずっと空いていた隣の部屋に新しい住人が越してきたと思ったら、その夜からこの騒音に悩まされている。

だがこのロック調の爆音は毎日流れている訳ではなく、1週間に1度あるかないかであり、むしろその騒音が安否確認といっていいほど隣人はそれ以外の生活音が全くしなかった。
丸一日かかるであろう引越しの時でさえ姿を見ることはなかった。

奨学金返済のために寝る間も惜しんでバイトを詰め込み、更にテスト週間も重なった疲労困憊期間に騒音をぶちかまされた時は殴り込みに行こうかと思ったが、どうにかインターホンを押そうとする指を抑えこんだ。

頻繁に家をクラブにしているわけじゃないし…いやそれでも迷惑なものは迷惑だ。
1度も会ったことのない隣人は憎たらしい。

引越し翌日、【한-Han-】と記された表札にべーっと悪態をついておいた。

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