▼ちいさな奇跡の日々 ページ14
*
あの日から、およそ一週間が経つ。
ちいさかったからだは今もまだやっぱりちいさいけれど、
あの 産まれて間もない姿を思い出してみれば、
幾分かおおきくなったような気がしている。
息を吸って 吐いて、という当たり前のようで実は大変な仕事を
産まれたときから自分できちんと出来ていたということもあって、
保育器という名の狭苦しい空間はわりとすぐに突破した。
そうして、
体重が2500グラムを越えて問題なければすぐ退院できるよ、という先生の声をまるできちんと聞いていたかのように
それはそれは順調に成長してくれた我が子は、
今日ついにすっかり見慣れたこの白い部屋を出ることになった。
母親であるわたしも一緒に。
卓は、運の良いことに、ここから五日間、ホームゲームが続く。
もうすぐシーズンオフだ。
ほんとうに、なんというか…
大事なときにちゃんとこうして近くにいることができるというのは、
運というか、なんというか。。
神様ありがとう、と思う。
彼が初めて我が娘を抱っこすることができたのは、
彼女が保育器を出たその日。
いつものあの低い声は2オクターブほどは高くなり、早くも親バカ発揮。
その光景を眺めながらわたしは泣いた。
何と言うか、ああ これがしあわせか、って、
今まで二十何年間生きてきて、初めて本当のしあわせに気づいたような気がした。
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作者名:まいち | 作成日時:2017年9月15日 3時