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*









「卓ちゃんが、…おとうさんか」

「なんや。何が言いたいの」






らしくないとか言いたいの?なんて言いながら、彼が ふ、と笑う。


それはいつもどおりの光景なのに、

おとうさんになった卓なんて
今まで呆れるくらいに想像して思い描いてきたのに。




理由は良く分からないけれど、なぜだか今日は、涙が出た。









「…そこで泣く?」

「……なんかもうね、うれしくて。うれしくて」

「Aも、おかあさんやん。…おかあさんだって。すごいわ」








そう言ってまたわたしの前髪をまるで子どもにするかのように優しく梳く。

思わず目を細めると、彼は ギシ、とベッドに手を置いた。



そうして、半分だけ覆いかぶさってくる身体。





ふわ、と 卓のにおいが鼻を掠めて、

なんだか妙に安心して、尚更涙が出た。







顔と顔の距離が5センチ、3センチ、1センチ…とだんだん狭くなって、
あ、キスされる…と思って目を閉じた瞬間、


鼻先をかぷりと甘噛みされる。








「!…いだい…」

「…いかんわ。口は。…場所どうこうとかじゃなくてもう、俺がだめになるから色々と」







言いながら、にやっと笑って…もう。

何言ってるのこの人は。




そんなこと言われたらわたしも色々とだめになるよ、ならないけど。




思わず乾いた涙を最後にぐいっと拭って むうっとした顔で彼を見やると、
宥めるように頭をぽんぽん と柔らかく叩かれた。








「そんじゃ帰る、そろそろ」

「………んん」

「なーん。また明日ね」









最後に頭を ぽん、と少し強くした卓の顔が
ずいっと近づいて、

触れるだけのキスが唇に落ちてきた。




久しぶりのそれに、

触れただけなのにそこから熱が広がって、
その熱があっという間に優しさに変わっていく。









「………そんなことされたら、産まれる…」

「っふふ、あほ。じゃーね」








最後にお腹に ぽん、と触れて、彼は部屋をあとにした。








…一緒になって何年経っても、こういうドキドキはなくならない。

むしろ年々増している気さえするほど。








この白い部屋に残されたわたしは、

ひとり、

浮かされた熱を必死に押さえつけながら目を閉じたのだった。











*

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ななせ - コメント失礼します!とても面白いです!!中島選手大好きなんで更新いつも楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2017年9月8日 22時) (レス) id: 884c868c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まいち | 作成日時:2017年8月11日 10時

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