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試合開始前、スマートフォンを覗いたら、Aから二度着信が入っていた。



彼女が、ホームでの試合前にこんなに電話をよこしてくることは滅多になく、
せいぜいサランラップが切れたからできたら帰りに買ってきてだとか、

そんな、緊急性という緊急性をそこまで要さないような可愛らしいものぐらい。




今回もそんな感じのものだろうと思いながらも二度目の着信とほぼ同時刻に届いていたLINEを開くと、
“病院いってくる"と一言だけ。




病院?

今日は検診ではなかったはずだ。
風邪…?
いや、今朝はピンピンしていた。
だとしたら…?



たった一言のメッセージが嫌な予感ばかりを連れてくる。





すぐに折り返し連絡をするも、
まるで感情のない機械的な声が「電話に出ることが出来ない」という旨を繰り返し伝えてくるだけ。
彼女の連絡から、一時間が経とうとしていた。





「卓〜、ちょい今日あいてる?たまにご飯食べ行かない?」
「……」
「無視かい」
「…いや、」


スマートフォンを握り締めてじっと俯く反応の鈍い俺を怪訝そうに眺めながら、鍵谷が近づいてくる。



「なした」
「いや、ちょっと…俺今日サクッと帰るわ」
「なんで。なした」




スマートフォンの画面を彼の顔の前に持っていき、短い言葉で事情を説明する。

だって俺すらまだ、事情という事情を掴めていない。







「えっ うまれんの?えっ 早くね?」

「いや、…だからさちょっと。心配やん」

「いや心配だねおまえそれは…帰んな?」



飯はまたにしよ、と 飲み込みの良い鍵谷は、
俺の尻をぽんと軽く押した。








(とりあえずもっかい連絡してみて…出なかったら、また試合のあとだな…)





目の前の鍵谷の表情がそれはそれはわかりやすく歪んでいて、
まるでそこに“心配だ"と書いてあるかのようだ。
こんな状況なのに、それを見て思わず苦笑する。




「なんでおまえがそんな顔しとんの」
「いや、だって意味深。すげぇ意味深じゃん、すげぇ心配」
「安定期とか言ってたし…そんな危ないもんでもないとは思うんやけど」





とは言いながらも、やはり心配は心配だ。


結局Aはすでに病院にいるのか連絡への応答はなく、
ただただ不安な想いを加速させた。








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ななせ - コメント失礼します!とても面白いです!!中島選手大好きなんで更新いつも楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2017年9月8日 22時) (レス) id: 884c868c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まいち | 作成日時:2017年8月11日 10時

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