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また、上の空だ。

最近、彼女の様子がおかしいことには、
いくら鈍感やら天然と言われる俺だって、当然気づいている。
ただ、様子の変化には容易く気づくことができても、その理由がわからない。

なんでもわかってあげられていると思っていたけれど、そうでもなかったみたいだ。
なんでもわかってあげられているふりをしていただけだった。

なにかあったの、と聞いても、返ってくるのは決まった言葉たちだけ。


「A」
「…ん?あぁ、ごめん、なに?」


ほかの男ができた?
それはないだろう。
自惚れているわけではないが、彼女に限ってそんなことあるはずがないだろう と、
どこから湧き出たものかは知らないけれどそんな大きな自信はあった。

仕事の悩み?
それもないだろう。
いつも彼女のほうから吐き出してくれているくらいなのだから。


(…だとしたら、)


だとしたら、の先の選択肢が、まったく浮かばなかった。
俺は今まで、彼女の何を見て、何を理解して、何を抱きしめてきたのだろう。
感じた痛みやつらさは、ふたりで分け合えるものではないのだけれど、
分け合えないなりに、少しでも軽くできるよう、今まで過ごしてきた。
こんなときに、手も貸してやれないなんて。


なんでもない とか、大丈夫だから とか、
彼女にだけは、絶対に言わせたくないのに。



「…たくちゃん」
「うん?」
「……たくちゃん…」

「…うん。言いたいことあるんやろ、べつにいいけん、ゆっくりで」


さら、と頭を撫でる。
涙目がこちらを見つめて、ゆっくりうなずき、うつむいた。
最近、身体に触れることすら拒むような反応を見せる彼女の手を握りしめて、目を閉じた。




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ななせ - コメント失礼します!とても面白いです!!中島選手大好きなんで更新いつも楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2017年9月8日 22時) (レス) id: 884c868c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まいち | 作成日時:2017年8月11日 10時

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