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*
そうして、
わたしの下腹に、そっと、
どこか遠慮がちに、添えられる てのひら。
痛いくらいにひどく優しく、
掌でそこをなぞる、卓。
途端に、ぶわっ と、涙が溢れた。
「… いるの?…」
「……っ…ごめ、っ」
「いるの?」
卓のもう片方の手の指先が、
わたしの溢れ出る涙を拭う。
何度も何度も、その宿った小さな奇跡を撫でて、
涙を拭っていた指先で頬に触れる。
「…ごめ、卓ちゃ…っ」
「なんで。なにが?なんで謝んの」
こんなはずじゃなかった、なんて少しでも思ってしまったことも、
もしかしたら卓の未来を壊してしまうかもしれないということも、
全部、ごめんなさい、って思った。
自信がないわけではやっぱり決してなくて、
これから先もずっと一緒にいる確信はあっても、
拭いきれない不安と、卓の本当の気持ち。
やっぱりわたしの気持ちなんて
全部見透かしているふうな卓が、
眉を下げて、笑った。
すこし、泣きそうな、困ったような顔で。
「…A。俺って、そんなに頼りない?」
止まらない涙に、声が思うように出せなくて、
ただただ首を横に振った。
伸びてくる腕がわたしを、その小さな奇跡ごと、すっぽりと包み込む。
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ななせ - コメント失礼します!とても面白いです!!中島選手大好きなんで更新いつも楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2017年9月8日 22時) (レス) id: 884c868c1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まいち | 作成日時:2017年8月11日 10時