真夏の君は透明で儚い 2 (ページ5)

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この誘い方はナチュラルすぎか、いや、雨強くなってきてるし、普通だよな？

「いや、え？じゃなくて、ほら。傘一緒に入ろ！！」
「あ、あ。うん。じゃあ、お言葉に甘える」

街灯に照らされたAちゃんの顔が、恥ずかしそうで可愛くて、
思わずギュッとAちゃんの腕を手繰り寄せた。

「わっ、ベク？」
「ほら、濡れちゃうでしょ？ちゃんとこっち寄って！折り畳みってちっさいんだから」

折り畳み傘が小さかったおかげで、俺は好きな子とこんな至近距離で歩けている。
大感謝でしかない。

「で、たぶん、のあとが気になっちゃうんですけど」

そう。肝心なさっきの話の続きが聞きたい。
そう言っただけだったのに、Aちゃんはモゴモゴと何か言いながら黙り込む。

「ね、どんな内容？」

捲し立てる俺についに痺れを切らしたのか、Aちゃんは俺の方を見た。

「たぶん、」

「たぶん、好きなんだと思う。」

ちょうど俺の家に着く頃だった。
好きな子の口から、好きという言葉が聞こえてきて。
俺は訳が分からなくてAちゃんの方を見る。

「え！？誰が、誰を？」

もう一度再確認したくて、聞き返すけどAちゃんは恥ずかしいのか黙り込んだ。

「Aちゃん？」
「ベク！もう家じゃん！ほら、入って！私は勝手に帰るし。」
「いやいや、話が終わってないよ」
「だっ、だから！！私が、ベクを！
あの、傘借りて良い？あ、いや、借りるね！」

早口で話すAちゃんに俺は何も言えなくなる。
え、どういうこと？何が起きてるの？

「じゃ、ほら！傘はまた次のバイトで返すー！
ありがとうね！勝手に借りたけど！」

ドンッと俺はAちゃんに押されて家のほうに寄る。いや、雨にあたってるし俺。

ていうか、勝手に傘借りて、次傘返すとか言ってるんですけどあの子。

「えー！待って待って！！Aちゃん！」

え、本当に行っちゃったよ。
俺の好きな子が、俺のこと好きって言って、走って行った。

しかも傘をパクって。

しばらく雨に打たれながらボーッとしていたけど、
Aちゃんの姿が見えなくなって家に入った。

柄にもなく、初めてのことにボーッとしてしまう。
これは俺、色々ダサくないか？

まず、好きという言葉にすぐに返せなかった。
あとは、傘を貸してあげると言わずにパクらせてしまった。そして、彼女を送ってあげなかったこと。

返事なんて、俺もという一言で良かったのに。と後悔だけが押し寄せた。