真夏の君は透明で儚い 2 (ページ24)

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「あ、大丈夫です」

スタッフの男性は私の返事を聞いてニッコリと微笑む。もちろん、愛想笑いというやつだ。
近くで待機していた様子のディオさんも気を遣って会釈をしてくれた。

私は仕方なくブランコに移動する。
こんな田舎の小さな公園だから、こんなことは滅多にない。折角だからと、創作活動が全く進まないでいる私はしばらく彼の仕事ぶりを観察することにした。

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圧巻だった。
先程私に向かって会釈をしてくれたディオさんは、撮影が始まった途端別人のようだった。

どういう内容の撮影で何を演じているのかも分からないけど、遠くから見ていても感じるプロの切り替え。
へぇ、アイドル、すごいな。

そんな風に思うようになっていた。
次第に私の頭の中からポンポンとアイデアが浮かぶ。彼のあの仕事中の表情、切なく、無機質で、だけど優しさがある、何とも言え難い表情。

あぁ、なんて言えばいいんだろう。

「すみません、突然こちらに移動していただいて...」

必死にペンを走らせていると、知らぬ間に近くにディオさんが来ていたようだった。
その声にハッと顔を上げると、
ハート型の口を緩ませたディオさんの顔があった。

綺麗、としか言いようがなくて、
アイドルに向ける黄色い声援なんてものよりも、もっと深い、声にならない声を発したくなった。

「いえ、とんでもないです。」
「あの、、何かされてるんですか？」
「えっ、あー、物書きのアイデアを...集めています」

なぜ、彼は私と話しているんだ？
私が腰掛けているブランコと全く同じ隣のそれに腰掛けるディオさん。それを見ている私の表情筋はどうなっているだろうか。
さぞ驚いた顔をしているんだろう。

「あ、の、お仕事は....もう、、？」
「あっ笑すみません。休憩です」

「あーー、なるほど....」
って、なるわけ無いでしょう？！
なぜ？ここで？？一般人の私の横で！？
それでも彼は話を続ける。

「本とかを書かれているんですか？」

「、、ベストセラー作家とかではないんですけど、小説を書いてます。あっ、さっき、撮影中の姿を見ていてアイデアが浮かんだので、ありがとうございました」

私はお礼を兼ねてペコリと頭を下げた。

「えっ、フフッ。すごい、なんか嬉しいですね。僕が小説のアイデアのもとになるなんて」

随分と可愛らしい顔で笑う男性だと思った。

決して劇的な話を書きたいわけじゃないのに、こんな展開、劇的すぎるじゃないか。