真夏の君は透明で儚い 2 (ページ3)

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時計の短い針が6を指す前にベクは私の元に戻ってきた。
あれ、可愛らしい友達はどうしたのかな？とかやんわり気にかけてみる。

いや、本当は気になって仕方がないけど。

夕方になってお店にやってきたベクの友達。それも女の子。
優しくてかっこいいベクだから、きっと大学でもモテモテなんだろうな、と萎える。

チャニョルがこの前言っていたみたいに無理矢理に笑顔を作ってみたけど、全然心のモヤモヤは吹っ飛んでくれなかった。
それに、黒いモヤモヤはもっと大きくなった。

チャニョル嘘つき！と悪態づきたかったけど、そんなのは何の意味もなさない気がしたからやめた。

「はぁ...」

ナヒちゃんと呼ばれる子は、柔らかい雰囲気の女の子で男の子からモテそうな印象だった。
それにベクのことを見る目は優しくて、うっとりとしていたし、すぐに彼女の気持ちに気付いた。

この前のプリントの字、あの子かな。
もう、何も考えないようにしよう！そう、ほら、帰りはベクと帰るんだし。

それに、私のベクじゃないんだし..。と、自分で思っては萎えた。

「A～、ため息つくと幸せ逃げるぞ。」

キャッチ～！ハイどうぞ。と隣で言うチャニョルに何故だか申し訳なく感じてきて、

「ごめん」

と謝った。そんなこんなで18時になったからという理由で休憩室に入る。

「お疲れ様、チャニョル締め頑張れ」と無責任に言葉をかけた。

そんな私に続いてベクがサロンを外しながら休憩室に入ってきた。未だかつてないような微妙な空気に包まれる私たち。

「Aちゃん、お疲れさま」
「お疲れさま、ベク」

......。

2人ともそれきり話さなくなって、それぞれ分かれて更衣室のロッカーに向かっていく。

いつもだったらコンビニの新作ケーキのことや、駅前にできたコーヒースタンドのこと、地元から3駅離れたところで事件があったとか、
そんな他愛のない話をするのに。

気まずいな、と思いながら更衣室を出るとそこにはすでに着替えが終わったベクが立っていた。

「お待たせ」
「おっ、行こっか」

いつからだろう。
2人でいると必ずドキドキするし、目を見つめられるとそらしたくなった。

帰り道にコンビニに寄ってお互いのアイスを食べ合いっこするときは必ず、“間接ちゅーだ”なんて意識しすぎてアイスが溶けたりもした。

いつからだろう。
ベクが私だけのベクだったらと考えるようになったのは。

外に出ると夏の始まりを感じさせる暑さに包み込まれた。