Butterfly ページ29
12月21日の今日。
仕事が終わった私をスタジオに迎えに来た彼に連れられてやってきたのは大切な思い出の場所。
目の前には周りのビルの光が反射して輝く川。
空を見上げれば綺麗な満月。
「寒いね」
口元から白い息が上がる。
「A。ほら」
言葉と共に差し出される彼の手に自分の手を重ねると、そのまま彼のコートのポケットへと導かれる。
彼の手の温度と体温で温まったコートが優しく私の悴んだ手を包み込んだ。
いつも忙しい彼らが長期休暇に入った。
アメリカ公演後から休みに入ったこともあり、そのまま彼はアメリカに留まり私のマンションで共に過ごしている。
といっても私には仕事があるから二人で過ごせる時間は少ない。
ユリさんが彼と休みを合わせられるよう奔走してくれたけれど、彼と休みを丸っきり合わせることは出来なかった。
落ち込む私に「Aの近くにいられてAを感じられるだけでいいんだよ」といって私を慰めた彼は仕事へと向かう私を何かと気遣いサポートしてくれている。
そんな彼に申し訳なさを感じずにはいられないけど、彼はこの生活をとても気に入っているみたいで毎日楽しそうにしている。
そんな日々を過ごす中、彼が連れてきてくれたこの場所で身を寄り添い寒空の下、いつかのように二人ただ静かに揺らめく水面を見つめる。
あの頃と変わらない景色。
時の移ろいなど感じさせない風景。
この場所は変わらずあり続けるのに、私たち自身は
私たちを取り巻く環境は、あの頃には想像すらしなかったほどに大きく変化した。
季節は夏ではなく冬に、沢山の人で溢れていた夕方から人目を忍ぶように夜に、そして、帽子や伊達メガネといった身を隠すものが手放せなくなった。
あの頃は夕日か沈むのが怖かった。
夕日が沈んだら、帰らなくてはならないから。
彼と離れなければいけない夜がやってくるのが、現実に引き戻されるのがたまらなく嫌だった。
お願いだからまだ沈まないで。
そう、何度願ったことだろう。
時が移り変わり大人になった今、夕日が沈むことに怯える必要はなくなった。その代わり、人目がある時間に二人何も気にせず出かけることは難しくなった。
何かを手に入れるには何かを犠牲にしなければならない。
そういう事なのだろうか。
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さくら(プロフ) - Sanagi1618さん» パスワードを送りましたので、メッセージをご確認ください。 (2022年7月5日 11時) (
レス) id: 7b4f4afa76 (このIDを非表示/違反報告)
Sanagi1618(プロフ) - はじめまして。楽しく読ませていただきました。宜しければパスワードを教えていただけるでことは可能でしょうか？ (2022年6月30日 23時) (レス) id: 772ebad025 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 柚さん» パスワードをお送りしましたので、メッセージをご確認ください。 (2022年6月29日 1時) (レス) id: 7b4f4afa76 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - annalove4752さん» パスワードをお送りしましたので、メッセージをご確認ください。 (2022年6月29日 1時) (レス) id: 7b4f4afa76 (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - はじめまして。楽しくて一気に読ませていただきました。宜しければ続編のパスワードを教えていただけないでしょうか？よろしくお願いします。 (2022年6月26日 21時) (レス) @page50 id: 6c04f8286c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくら | 作成日時：2022年1月3日 22時
