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まだコートとマフラーは手放せないけど、なんとなく寒さがマシになってきたかな、って頃。

芋くんに積極的にアプローチするもどれも釣れない態度で空振り。

まあ…、急に全然違う系統の人間が接近してきたら警戒するのが普通か。

私の普通なんてあってないようなもんだしね。

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大学構内のベンチに適当に腰掛けて、誰かが置いていったのであろう空のペットボトルを蹴っ飛ばす。

今日はどの辺に男の子引っかけに行こうかな。そう思ってスマホを弄ろうとしたときだった。

「………？」

覗き込んだスマホ全体に落ちる薄い影。雲が太陽にかかった？それにしては局地的な気がする。

不審に思って顔を上げようとする前にずいっと前に差し出される、さっき勢いよく飛んで行ったはずのペットボトル。

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「………え？」

『え？じゃない。お前が捨てたんだろ』

……その声、

ずっと引き出してみたかった声に驚いて顔を上げるとそこにいたのは

真っ黒で大きめなパーカー、何年着てるのかわからないようなジーンズ、履き古されたスニーカー、謎のスポーツ刈り、大きな黒縁メガネ……、

紛れもない、芋くんことドギョンスくんだった。

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『捨てなよ、自分で』

「いや、私が捨てたんじゃなくて、ただそこにあったから蹴っただけで…」

『……はあ、どっちだっていいけど、気付いたら捨てろ』

深みのある声は他の人に言われるよりも言葉に説得力を持たせてる気がする。

別にペットボトル捨てろって言葉に説得力もクソもないけど。

しぶしぶ手を伸ばして捨てに行こうとすると、指先にペットボトルが触れる前にそれは遠のいて行った。

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「…え、」

『今度からはちゃんとして』

そう言って踵を返した芋くん。

私の手は宙に浮いたまま。