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講義が終わってだらだら人が出ていく波に紛れて芋くんのリュックを後ろから引っ張った。

すると不機嫌そうな顔でこちらを振り向いた芋くん。

……そんなにあからさまにしなくたっていいじゃん。

.

『……何か』

「お名前は？気になって声かけちゃった」

最上級の笑顔で、胡散臭くならない程度に声を高くして話しかけると

じろっと私を睨みつけたあと、何も言葉を返すことも無く私に背中を向けて歩き出した。

…大丈夫大丈夫、ちょっとびっくりしちゃっただけだよね？

そうだよね、私とあなたじゃ生きてる世界がまるで違うもんね。

早足で遠ざかるその背中を小走りで追う。

今度はリュックを引っ張らずに後ろから顔を覗き込んだ。

『……何なんですか』

「無視は良くないよね？」

『すいません、急いでるので』

「仲良くなりたいだけなの、別にノート見せて欲しいとかじゃないしさ」

『ノートだかなんだかわかりませんが他の人当たってください』

.

私の顔をぐいっと避けてそのまま歩き出してしまった芋くん。

これ以上追いかけたらダメだな。余計に警戒させちゃう。

この辺の微妙なさじ加減は心得てるつもり。

どんどん小さくなってく背中を見つめながらメッセージアプリを開く。

別に今どき本人から名前が聞けなくたって知る方法はいくらでもあんのよ。

適当に何人かに芋くんの情報を伝えて名前を聞く。

すると待つ暇もなく送ってくれるありがたいオトモダチ。

.

「………ドギョンスくん、かあ」

名前を頭の中で繰り返しながらさっきの不機嫌そうな顔を思い出して少し笑う。

いつか満面の笑みにさせてやる、

……まあ、長くは付き合ってあげられないけど。