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「山田、俺そろそろ日向ぼっこしたいんだけど」
「はぁ？」
「お前のせいで雨降ってんだよ。早く晴れにしろよ」
雑誌の撮影でペアになった山田に、
小さく八つ当たりしてみる。
「変な言い掛かりはやめてくれます〜？」
言い掛かりじゃなくて、ほんとなんだけど。
お前がいのちゃん笑わせてくれたら晴れるんだよ、
とは死んでも言えないけどね。
「山田さ、晴れたら何かしたいことある？」
「え？え〜〜、したいこと…」
「…無いのかよ。お前ゲームばっかだもんな」
う〜〜〜ん、と考え出した山田に呆れる。
これだから、引きこもりゲーマーは。
「あっ」
「なに、なんか思いついた？」
「浅草行きたいわ。
前にあそこで食べたメロンパンちょーうまかったんだよ！」
「浅草、ねぇ」
.
『昨日、山田と浅草行ってきたんだ。これ大ちゃんにお土産』
『なにこれ、いらね〜』
『ちょっと！』
いのちゃんの笑った顔がフラッシュバックする。
あのお土産のストラップ、どこやったっけ。
.
「…聞いてる？
そういえば、近くのビルにちょっとした穴場の展望デッキがあったんだけど、そこから人間観察すんのがおもしろくてさ。ふふ、そん時……あ、っ」
思い出し笑いしながら話し出したと思えば、
急に失速する声。
きっと、いのちゃんのことを思い出したんだってすぐに分かった。
…なんでお前がそんな顔すんだよ。
「ごめん、なんでもない。っ、大ちゃんは？」
「ん？」
「晴れたらしたいこと。あ、日向ぼっこだっけ？」
「あー･･･」
前を向くと、白いライトとレフ板が目に入る。
太陽の眩しさってどんなだったっけ。
「……俺は、虹が見たいかな」
なぁ、いのちゃん知ってる？
虹を見るためには雨が必要なんだよ。
まあ、晴れなきゃ意味無いけど。
「へ〜、大ちゃんて意外とロマンチストなんだね」
「うるせーばか」
つまり何が言いたいかと言うと、
いのちゃんの涙は無駄じゃないって、俺は思うよ。
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作者名：ゆず
| 作成日時：2020年6月22日 0時
