07 ページ7
まあ、そんなくだらない戦いは勿論、呆気なく終わる訳で。
僅か1分どころか30秒もしないうちに決着はついた。
なんてったって、俺背高いからね。
普通に覗き込もうと思えば覗き込めるんですよね。
じゃあ、さっきまでの無駄な戦いは何だったんだよって感じだよね。
うん、それ俺も思った。
話を戻して、百合さんが必死に隠そうとしていたものは、
「…にゃー」
「…え」
ダンボールの中にすっぽりと収まっている、小さな黒猫だった。
…なるほど。
彼女はこの黒猫を隠したかったのか。
多分、彼女が隠そうとした理由は俺にこの黒猫の存在を知られて、先生に告げ口されるのを恐れたからであろう。
あくまでも推測だけど。
「……あの」
俺に黒猫を見られてから、固く口を閉ざしていた百合さんは、顔を俯かせたまま、聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。その声は何かを堪えているかのように、微かに震えていた。
やべえ、怒られる。
彼女のそんな態度に、瞬時にやばいと悟った俺は、ばっ、と勢いよく頭を下げ、謝る体勢を作った。
「ごめんなさ…っ」
「この子のことは、誰にも言わないでください」
「……へ」
半ば無理矢理見てしまった俺に対して絶対に怒っていると思っていたのに、予想外の言葉が彼女の口から発された為、思わず間抜けな声を漏らした。
「もし、先生などにこの子のことを知られてしまったら、保健所に連れて行かれてしまうかもしれないので、出来れば言わないでほしいです」
お願いします、と深々と頭を下げられる。
そんなにお願いされたらNOなんて言えるわけもなくて。
頭で考えるよりも先に、反射的にYESの答えを返した。
もちろん、先生に言ってやろうなんて考えは端からなかったが。
「ありがとうございます。では」
もう一度深々と頭を下げた百合さんは、そそくさとその場から去ろうとする。
「え、ちょっ、」
急に立ち去ろうとする彼女を呼び止める為に、声を発したが、その声は彼女の耳に届くことはなく、風に流されて消えていった。
否、もしかしたら聞こえていたけど無視されたのかもしれない。
そう思うと、なんだか悲しくなってきて、ガクッ、と一人、項垂れた。
初めて話したってのに、完全に嫌われてんなこれ……。
今まで別に百合さんに興味があったわけではないけど、流石に嫌われてると思うと心にくるものがあった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 93人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱらこ(プロフ) - ちゃんかなさん» ほんとですか！すごく嬉しいです、ありがとうございます！殿堂入り出来たら本当に嬉しいんですけど、ちょっと難しそうですね(・ω-｀；)更新頑張ります！ (2016年7月17日 20時) (
レス) id: 4590938f0d (このIDを非表示/違反報告)
ちゃんかな(プロフ) - キャラ崩壊どころか……キヨさんらしい感じのお話ですし、とっても読みやすいので大好きです！更新楽しみにしてますね！是非殿堂入りして欲しい作品です(´･ω･`) (2016年7月17日 2時) (レス) id: 92b328d118 (このIDを非表示/違反報告)
ぱらこ(プロフ) - 雨雲悠真さん» ありがとうございます！ 頑張ります(´∀｀) (2016年7月14日 19時) (レス) id: 4590938f0d (このIDを非表示/違反報告)
雨雲悠真(プロフ) - ぱらこさん» キャラ崩壊してても面白いですよq(^-^q)更新頑張って下さい！(°∀°) (2016年7月14日 7時) (レス) id: 6db93648d9 (このIDを非表示/違反報告)
ぱらこ(プロフ) - 雨雲悠真さん» 出来るだけキャラ崩壊しないように頑張ります…。コメントありがとうございました！ (2016年7月13日 19時) (レス) id: 4590938f0d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱらこ | 作成日時：2016年7月9日 17時
