【実.況.者】誰も知らない彼女の一面【キ.ヨ】

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「はあああ…疲れたー！」


部活が終わり、制服に着替えひと段落ついた瞬間にもうすっかり暗くなった空に向かって疲労具合を叫ぶ。


疲れるけど、でもやっぱりサッカーは楽しい。

だからつらい練習にも耐えられる。
次も頑張ろうと思えるんだ。



今いいこと言ったっしょ、俺！



「キヨー！ 帰るべー！」


「あ、おう！」


まったり歩いていると、先を歩く友達に呼ばれ、追いつくために小走りでそちらへ向かう。


「今日も疲れたなー」


「なー」


他愛もない話をしながら自分の自転車が停めてある駐輪場まで向かっていると、ふとポケットがいつもより軽いことに気付く。


あれ、なんでだ？


疑問に思い、ポケットの中をがさがさ、と探る。


すると、いつもはあるはずの固い感触が感じられなかった。


「あれ…」


本当に無いか、ポケットの中で手を暴れさせてみるが、やっぱり求めている感触を感じられない。

ポケットを裏返しにしてみてもやっぱりそれは無かった。


「なした？」


その場に止まって必死にポケットを漁っている俺に疑問を持ったのだろう、友達が振り返り、様子を伺ってきた。

が、自分の事に必死でそんな問い掛けも耳に入ってこなく、全く反応を示せなかった。

すると、友達が俺の側に来る。


「なし…」

「やっぱり無ぇ!!!!」

「うわっ!?!?」


”なした？”

多分友達はそう言うつもりだったんだろうが、見事にその心配してくれている言葉を遮って大声を発した。


俺のデカボイスに本気で驚いたのか、友達は両手をグーにして自分の顔の近くに持っていき、身を窄ませている。


お前は女子か！


思わずそう言いたくなったが、こうなったのも自分の所為なため、喉元まで上がってきたところをぎりぎりで飲み込んだ。

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