┗過去 ページ4
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【過去】
頼りになる父と心優しい母。そのような両親のもとに一人息子として生まれ、幸せに育っていく。
──はずだった。
翔介が6歳の頃、横断歩道を渡っていた母が一時不停止の普通車に轢かれて重傷。後に命を落とす結果となったのである。
*
妻を失い、シングルファーザーとしての新たな生活を余儀なくされた父は、スムーズにいかない子育てやシングルになったことによる仕事への影響、それに伴う精神的疲労から次第に荒れていった。宝物のはずの息子が可愛く思えなくなり、ついには愛しているはずの今は亡き妻のことを「俺がこんなに不幸なのはアイツのせいだ」と恨むようになった。夜遅くまで飲み歩き、帰宅が深夜になることもザラだった。
それから約2年の年月が経った某日、父は「ガキなんか作るんじゃなかった。アイツと結婚したのがそもそもの間違いだったんだ。俺を不幸にしやがって」と吐き捨て、出勤のために家を出た。ありふれた平日の、よく晴れた朝だった。
警察から電話があったのは、父が家を出てから数時間後のこと。路肩に社用車を停め、仕事相手と電話をしていた最中、暴走トラックに追突されたとのことだった。父の乗っていた車は大破。父本人も重傷を負ったが、救出・搬送されるまでの間、ずっと意識があった状態で生きていたらしい。相当苦しい思いをしたことが推測される。病院到着後、間もなく死亡が確認された。
*
母に続き、父まで失った。
本当ならば悲しく思えるはずだった。
──が、病室で亡骸を見ても、葬儀で最後のお別れをしても、父の時は一度も涙が出てこなかった。「ああ、やっと死んだのか」と安堵している自分さえいた。翔介にとっては、命日に父が吐き捨てたあの言葉が全てだったからである。
*
そして時は流れ、現在。
消滅病発症を言い渡された翔介は、真っ黒だった髪を水色に、目をオレンジ色に変えた。消えるその直前まで、より多くの人間に自分のことを覚えていてもらいたいという思いがあっての行為だった。
尤も、彼は消滅病をどこかフィクションのように捉え、あまり本気にはしていないようなのだが。
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ツヅレ(プロフ) - 木木野さん» 承諾ありがとうございます。了解いたしました…! (2022年6月23日 13時) (レス) id: 3767ff8d42 (このIDを非表示/違反報告)
木木野(プロフ) - ツヅレさん» お声掛けありがとうございます。ぜひお願いいたします! 詳しくお話しさせていただきたいので、お手数お掛けいたしますが、此方のボードまでお越しいただいてもよろしいでしょうか? (2022年6月23日 12時) (レス) @page8 id: add981d1da (このIDを非表示/違反報告)
ツヅレ(プロフ) - 同じ企画に参加させていただいておりますツヅレです!よろしければうちの霞と関係を組んでいただきたくお声がけさせていただきました!ぜひご検討ください! (2022年6月23日 12時) (レス) @page8 id: 3767ff8d42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木木野 | 作成日時:2022年6月19日 1時