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「来ちゃったよ！Aの顔見に」
「ありがとう。あ、私の作品、見ていって」
私は1年生の子に受け付けをお願いして、みことに作品の軽い解説を始めた。
「これすごい！Aが書いたんだよね」
彼女が見て驚嘆の声を上げたのは、千字文。
......まあ、ただでさえ文字数が多いからね。
書いている時は、ほぼ放心状態だったなあ......
「そう。大変だったんだ」
「あ、そういえば、今書いてるのもう無理！嫌だ〜、って言ってたね」
そうそう。塾でずっと愚痴ってたら、相葉先生が『大丈夫だ！朝比奈なら大丈夫！』って、励ましてくれたんだっけ。
「あとは......これ、和歌？」
反対側に飾られた、深緑の額。
目立たないけれど、その存在感は私にとっては大きいものだ。
「うん。毎年書いてるの」
「そうなんだ......さしもしらじな、って、私これ知ってるかも」
嬉しそうな横顔。
唯一、私の気持ちを知る彼女には、正しく理解してもらえそうかも。
「これ、百人一首だよね。作者は、藤原......実方！」
「正解！」
日本史でやったんだっけ、古典でやったんだっけ？
まあいずれにしても、文系のみことには簡単すぎる問題。
今なら、小学生でも知ってる人がいるくらい。
でも、意味まできちんと理解するのは、やっぱりいろんなことを知ってからかな。
「恋歌だね。......あ、わかった、先生のこと考えて書いたでしょ」
少し小声で、私の耳許で言う。
さすが、みことさん。ビンゴです。
「やっぱりね。でも、Aらしいというか。合ってると思うよ」
「ありがとう」
少し照れるけど、楽しい。この時が、楽しい。
そして、はっ！と唐突に何かを思い出したらしい彼女は、私の目を見て問う。
「ね、先生たち来た？」
「いや、まだ」
「まじか」
ちょっとだけ、しょぼん、ってする。でも、すぐに体勢を立て直して、
「まあ、しょうがないか。運が回ってこなかったのかな」
どこか悔しそうだったけど、最後は笑顔になった。
ありがとう、って言って、みことは帰っていった。
嬉しかったな。
今までは、誰か知ってる人が来る、なんてことは無かったから。
気がつくと、既に終わりの時間を告げようとしていた。
先生たちは、きっと明日来てくれるんだ。
そう考えただけで、明日が待ち遠しく思えた。
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なの(プロフ) - たぴおか。さん» たぴおか。さん、初めまして！嬉しいお言葉、本当に励みになります！ゆっくり更新となりますが、楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年2月12日 21時) (
レス) id: d783c00f36 (このIDを非表示/違反報告)
たぴおか。(プロフ) - はじめまして ！コメント 失礼します 。最近 読み始めたのですが 、とっても好きになりました ！！ これからも更新 待ってます ！ (2018年2月11日 11時) (レス) id: 7c7e156c03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なの | 作成日時：2016年7月13日 20時
