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食事が終わって、お皿の片付けなんかは後回しにして、Aがケーキを出してきた。
……いい笑顔。
本当に、楽しみにしてたんだな。
彼女がどんなケーキを買ったのかは、俺は知らない。
箱の大きさからして、4号くらいの小さめのホールケーキだと思うけど……
あまりにもわくわくした表情をしているから、思わず訊いた。
｢そんなに楽しみにしてたの？｣
｢……ふふ。そう、とっても楽しみだったの｣
……可愛いなあ。
にっこりと微笑んだAは、フォークとお皿、切り分けるためのナイフを持ってきて、ローテーブルについた。
そして、そのままの表情で、弾んだ声で言う。
｢雅紀くん、箱開けて｣
｢俺？……うん、じゃあ、開けるよ｣
そんなに楽しみにしていたのに、俺が開けちゃっていいのかな？
そう思ってAの顔を見てみると、やっぱり満面の笑み。
……どうやら、俺が開けてもいいみたい。
その表情に安心して、箱を開け、ケーキを取り出してみると……
｢……え？｣
……そこにあったのは、クリスマスケーキではなく、『お誕生日おめでとう』のプレートが載った、バースデーケーキだった。
｢雅紀くん、お誕生日おめでとう｣
ふわ、と微笑む彼女。
……もしかして、俺を驚かせるために、ケーキも予約して、誕生日のことも言わなかったのかな？
そう考えると、とてつもなく愛おしく思えてきた。
｢A……｣
頬を紅く染めて、嬉しそうに笑う表情に、俺は思わず抱きしめずにはいられなかった。
｢ありがとう……すごく、嬉しいよ｣
｢よかった……どこかでばれちゃうんじゃないかって、すっごくドキドキしてたんだ｣
よっぽど、言葉通りに緊張していたんだろう。
余計な力が抜けたのか、抱きしめる俺に身体を預けて、肩に顔をうずめてきた。
｢……おめでとう。私にとっての今日は、雅紀くんの生まれた日｣
……いつもしっかりしていて、俺でさえ頼りにしたくなるようなAが、時々見せる甘えた顔。
少し恥ずかしそうに言うのが、とっても可愛くて。
俺は、抱きしめる力を少しだけ強くする。
｢……俺、こんなふうに誕生日を祝ってもらえるなんて、本当に幸せだね｣
｢ふふ……今年は忘れてるのかな、って思ったでしょ？｣
｢……ちょっと思った｣
じゃあ、サプライズ大成功だね、って言って、悪戯っぽく笑う彼女の表情は、嬉しそうに煌めいていた。
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作者名：なの | 作成日時：2019年12月21日 0時
