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とりあえず俺の家に着いて、昨日の夜から仕込んでおいたチキンを取り出して焼くところから、料理がスタートした。
狭い部屋の狭いキッチンに、二人で並んで立つ。
Aも俺も、一人暮らしをして長いから、てきぱきと無駄なく作業が進んでいく。
料理を一緒に作るのは、週末にお互いの家に行く時か、平日なら今日みたいに特別な日。
本当は外に食べに行ってもよかったんだけど、Aが家で食べたい、と言うから、俺は快諾した。
家の方がゆっくりできるし、なによりもAの作る料理は美味しい。
わざわざ混みあっているお店に行くよりも、自分たちで作って食べた方がいいね、なんて言って、いつものように俺の家に来た。
｢そろそろチキンいいかな……雅紀くん、どう思う？｣
｢いい感じに焼けてるんじゃない？もう火から外していいと思うよ｣
Aがコンロの火を止めて、美味しそうな香りを漂わせる鶏肉を、お皿に盛り付け始めた。
……こんな人が、ずっと一緒にいてくれたらな。
料理をしている姿を見ると、どうしてもそう考えてしまう。
小さい欠片を口へ放り込んで、うん、と頷いている姿は、思わず微笑んでしまうくらいで。
俺はその横顔を見ながら、作っていたスープの火を止めた。
｢ミネストローネ？美味しそう｣
｢でしょ？最近好きでよく作ってるんだよね｣
俺がかき混ぜていた鍋の中を覗き込んで、Aが言う。
これも、昨日のうちに下ごしらえはしてあったから、今日は煮込むだけでよかった。
お互いのハマっているレシピを教えあったり、作りあったりするのも、俺らの中での楽しみ。
二人とも料理が好きだから、それを通してコミュニケーションが取れるのは、俺にとってはとても幸せなことだった。
｢じゃあ、食べようか｣
｢うん。お腹すいちゃった｣
えへへ、とどこか恥ずかしそうに笑うAが可愛らしくて、一瞬次に何をしようとしていたのか、忘れそうになった。
……俺、本当に単純だなあ。
カトラリーと取り分けるためのお皿を出してきて、テーブルに料理を並べると、一気に華やかな食卓になった。
｢いただきます｣
ローテーブルで、お酒も開けながら、二人で向かい合って食べ始める。
折角のクリスマス・イブだから、ちょっといいシャンパンを買ってきた。
二人で食事を作って、食べて、他愛もない話をするだけ。
それでも、俺らにとっては大事な時間だし、一番幸せを感じられる時間でもあった。
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作者名：なの | 作成日時：2019年12月21日 0時
