▽ ページ25
.
嘘みたいな告白の成功から、俺らはお付き合いを始めた。
まだ親父には言ってないけど、時期が来たらちゃんと言おうと思ってる。
彼女は親父が選んできた秘書だし、すごく気に入られているみたいだから、きっと大丈夫だろう。
……そして、二人で過ごすクリスマスは、今年で2回目。
副社長室で過ごす時間も、そう悪くはない。
｢智さん｣
｢ん？｣
｢今日……お食事にご一緒してもいいですか｣
ちょっとだけ恥ずかしそうだけど、まだ余裕がありそうな表情。
……どうやったら、彼女の顔からこの余裕さを無くせるんだろう、なんて、俺のSっぽいところが顔を出す。
｢もちろん……もう店は取ってあるから、一緒に行こう｣
腕の中の彼女に向かって笑いかけると、嬉しそうに表情を綻ばせた。
……でも、食事だけで終わるなんて思ってないよね？
すっかり女の子の顔になって油断したところを見計らって、耳元で、思いっきりの低音で囁く。
｢……その後、俺ん家おいで｣
目も合わせずにそう言ってやると、ぴくっ、と身体を震わせて、また俺の方を見た。
そして、その瞬間を見逃さなかった俺は、すぐに彼女の唇を奪いにいく。
流石に驚いたようで、その表情には、さっきまでの余裕は無かった。
ぎゅっと目を瞑って、俺からのキスをただただ受け取るだけ。
……ああ、可愛いな。
いつも彼女の方が一枚上手なのが悔しいから、ちょっとだけ嬉しいような。
レストランで食事をした後は、家でゆっくり楽しむことにしよう。
口づけを交わしながら、そんなことを考える余裕さえある。
たまには、俺にもリードさせてよ。
弾けるくらいに抱きしめて、熱くて深いキスを交わして。
大好きなんだよって、愛してるって、いろんな表現で伝えさせてよ。
……そして、また、その笑顔を見せて。
________俺が、何度でも君に恋してしまうくらいに。
いや……もう、何度も、数えきれないくらい、恋に落ちていた。
君が、俺の下で働き始めてから。
今もまた、こうやって抱きしめている間にも、恋をしているのかもしれない。
一瞬キスをやめて、抱き合ったまま見つめ合う。
……なんて幸せな時間。
｢……A｣
そう名前を呼ぶだけで、愛おしそうに笑うのだから。
俺だけに向けてくれる、俺だけが独り占めできる、天使の微笑み。
ねえ。A。
いつまでもあなたのそばで、愛させてくれますか。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 295人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なの | 作成日時：2019年12月21日 0時
