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｢……ごめん｣
｢……え｣
｢こんなこと突然言われて、戸惑うだろうし、気持ち悪いって感じただろうし……本当に、申し訳ない｣
……驚いた彼女の顔を見て、これはもうダメだと思った。
でも、言ってしまった言葉は、二度と取り戻すことはできない。
だからせめて、きちんと謝って……
｢……どうして、謝るんですか｣
｢へ……？｣
思いがけない彼女の言葉。
俺は思わず間抜けな声を出しながら、顔を真っ赤に染めた彼女を見つめた。
｢気持ち悪いなんて……思ってません。ただ、びっくりしただけで……｣
普段話しているような、よそ行きの声ではなくて、少し小さくて、やっぱりこの年代の女の子なんだ、とわかるような声。
……少し、素の部分が見えたような気がして、ちょっと嬉しくて。
俺は、彼女が言葉を続けるのを、黙って聞いていた。
｢……副社長のお言葉、私なんかが受け取ってしまって、本当にいいんでしょうか｣
……ってことは？
｢どういう……こと？｣
それは、Yesという返事なの？
それとも、Yesだけど、ごめんなさい、ということなの……？
はっきり言われないと理解が追いつかないくらい、頭の中はパンクしそうで。
この状況がどういうことかも、よくわかってなかった。
でも、彼女の次の一言は、一直線に頭の中に伝わった。
｢……私も、好きだと思います｣
｢ほんとに……？｣
｢……嘘はつきません、副社長の秘書ですから｣
そう言って恥ずかしそうに微笑む。
……あまりにもその表情が、愛おしくて。
そして、ありえないことが起こったな、なんて頭の片隅では思いながら、彼女も同じ気持ちだったことが純粋に嬉しくて。
俺は、無意識のうちに彼女の元まで歩いていき、そのまま抱きしめていた。
｢……いいの？俺で｣
｢副社長こそ……私なんかでいいんですか……？｣
少し、不安そうな声が聞こえた。
……俺よりも、小さくて、華奢な身体。
抱きしめると、その細さがわかる。
俺が、守ってあげたい。そう思わせてくれるから。
｢……君だから、好きになったんだよ｣
二人しかいないだだっ広い部屋で、彼女だけに聞こえるように囁く。
……俺、柄にもないことしてるな。
でも、これくらいさせてよ。
だって、好きになっちゃったんだから。
安心させるように、彼女の背中をぽんぽん、と軽くたたくと、俺の背中にもその華奢な腕が回った。
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作者名：なの | 作成日時：2019年12月21日 0時
